暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十九話 懸念
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いた。
「そう思うと未来が読めるっていうのもあながち嘘じゃないんじゃないかって思えてくる、……馬鹿げているよな」
「……」

少しの間沈黙が有った。お互いに顔を見合わせ黙っている。馬鹿げているだろうか? ギュンターがまた話し始めた。
「海賊とは言っているが他の組織とは全く違うんだ。黒姫一家には既存の海賊の常識が当て嵌まらない。あれは海賊とは名乗っているが何か別のものだよ、別の何かだ」

「確かに海賊がイゼルローン要塞を攻略するなんて考えもしなかったな。ヴァンフリートを割譲させることも……」
「そうなんだ、海賊と言う枠に収まりきらないし国という枠にも収まりきらない。結局はエーリッヒは何を考えているのか、エーリッヒとはどういう人間なのかを調べるしかないんだ。オーベルシュタイン中将がエーリッヒの事を調べさせたのもそれが理由だと思うんだが……」
「……入って来るのは訳の分からん風聞ばかりか……」
ギュンターが頷いた。そして何を思ったか顔を顰めた。

「まあ、分かっている事だけでも十分とんでもないんだがな。……卿は知らんだろうな、表向き黒姫一家の構成員は八万人と言われている。だがそれは交易、輸送、警備業務に携わっている人間だけの数字だ。実際にはもっと多い、三倍近く居るだろう」
「どういう事だ」
俺が問いかけるとギュンターは微かに笑みを浮かべた。冷笑だろうか。

「エーリッヒは辺境の企業を買い取って規模を大きくして開発をさせているのさ。道路、宇宙港、電力、上下水道、ガス、通信……。もっぱらインフラ関係に従事する企業だ。それらの企業は黒姫一家とは表向きは無関係という事になっているんだが勤めている人間は十五万人以上いる。そしてその数字は開発が進むにつれてさらに増えるだろうな」

「そんな馬鹿な、聞いていないぞ、そんな話は……」
今度は首を横に振った。
「隠しているわけじゃないだろう、調べれば分かる事だからな。彼らはエーリッヒが給料を払うのではなく企業が給料を払っている。海賊として活動しているのが八万人という事だ。フェザーンや帝国の経済人達は知っているよ」
「……」
ギュンターが俺を見ている。切なそうな表情だ。

「已むを得ない事なんだ。辺境は貧しかった、インフラ整備も碌にされていなかった、発展のしようが無かった……。辺境を発展させようとすれば先ずインフラの整備が要る。政府がやらない事をエーリッヒが自費でやっただけだ。辺境は少しずつインフラが整備され住民達の生活水準も向上した」
「……」

「結果として辺境は宇宙空間も地表もエーリッヒの影響下に有る。中央の企業はエーリッヒが整備したインフラを前提として進出を決めている。そして反乱軍から生産財を入手してくるのもエーリッヒだ。分かるだろう、辺境は発展するにはエーリッヒが必要で発
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ