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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十九話 懸念
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だ、エーリッヒは不穏分子では無いが要注意人物ではある。扱いを間違えないためにも情報は必要だったはずだ。

「憲兵隊には有るのか?」
「一応有るな。フェザーンの格付け会社の報告書を元に作成したものだ。但し、あれが何処まで役に立つかはわからん。ちょっと調べれば分かる事しか書いていないからな。俺なら参考資料扱いだ」
憮然としている。古巣の不甲斐なさにウンザリしている風情だ。しかし、妙だな……。

「オーベルシュタイン中将は調べていないのか?」
「いや、着任早々調べさせているよ。他の海賊やフェザーン商人にエーリッヒの事を確認させたらしい。警察や社会秩序維持局にも問い合わせをかけたと聞いている」
「それは?」
ギュンターが妙な顔をしている。困った様な笑い出したい様な表情だ。

「情報は集まったんだ。それこそ本が二、三冊書けるほどにね」
「……それで?」
「ゴミ箱行きさ」
「はあ?」
俺の答えにギュンターが笑い出した。

「当てにならない、情報としての精度がどれもこれも低すぎるんだ。エーリッヒの身長一つとっても二メートルを超える大男なんて話まで有る。頬に傷が有るとか大酒のみだとかな。黒姫一家は犯罪に関係してる、覚醒剤を扱っているって情報まで有った。警察に確認しても真偽は分からないと言われたらしい。酷いのになると未来を読める、そんなのも有ったようだ」
「……」

唖然としてギュンターを見ていると今度は肩を竦めて苦笑した。
「そんな顔をするなよ、アントン。黒姫一家は急速に組織が大きくなったからな、真実よりも風聞の方が多いんだ。エーリッヒは海賊組織の間では生きている伝説みたいな存在だよ。何処までが本当で何処からが嘘なのかは誰にも分からない」
「……冗談じゃないんだよな……」
俺が問いかけるとギュンターが頷いた。もう苦笑はしていない。

「冗談じゃない。……なあ、アントン。黒姫一家の組織の規模、収益なんて外見は参考資料を見れば簡単に分かる。とんでもない勢いで成長しているよ。でも俺はそれを知る事に意味が有るとは思えない、いや意味は有るのだろうがもっと重視すべき事が有る、そう思っている」
「どういう事かな」
一瞬だけギュンターが口を噤んだ。

「その先だよ、その先が分からないんだ。何故そんな成長が可能なのかがな。最初は貴族の相続、反乱を利用して儲けた、次は反乱軍、貴族との戦争だ、今は反乱軍との交易で儲けている」
「……」
分かるかと言うようにギュンターが目で問い掛けてきた。ゆっくりと頷く。ギュンターはそれを見てまた話し始めた。

「滅茶苦茶だよ、やりたい放題やっているとしか思えない。でも誰にでも出来る事じゃないんだ、エーリッヒだけがやっている、おかしいだろう?」
「……確かに、そうだな」
俺の言葉にギュンターが頷
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