第十九話 懸念
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ザーンへ送る人間だが……」
俺が話しかけるとギュンターが頷いた。
「今絞り込んでいる。現時点で三名が確定している、残り七名は明日までには選び終わるよ。それとは別に政治体制、経済、歴史、それぞれの分野でフェザーンを調べさせるべく人を選んでいる。調査室を作るつもりだ」
「そうか……、例の件、どう思う?」
「フェザーンはただの拝金主義者じゃない、あれは擬態だ、だな……」
「ああ、人を送ると決めておいてなんだが、どうも引っかかる」
ギュンターを見た。向こうもこちらを見ている。
「引っかかるから送るんだろう」
「まあそうだが、……嘘だと思うか?」
ギュンターは少し考えていたが首を横に振った。
「エーリッヒは詰まらない嘘を吐くような奴じゃない、フェザーンには何かが有ると見た方が良い。もし嘘を吐いたなら何らかの目的が有るはずだ。辺境にも人は送る、向こうの動きも探らせるさ」
擬態か……。確信有りげな口調だった。そしてフェザーンをかなり危険視していた。
「フェザーンがエーリッヒを危険視しているのは分かっていたが、エーリッヒも相当フェザーンを危険視しているな」
ギュンターが“そうだな”と頷き直ぐ言葉を続けた。
「フェザーンにとっては中継貿易の利を奪われたんだからな。おまけに今ではエーリッヒはフェザーン回廊も使って反乱軍と交易をしている。フェザーンにとってエーリッヒは権益の侵略者だよ、それだけに反発は強いだろう。今回の一件もそれが原因だ」
「なるほど……」
「もっともエーリッヒのおかげで最近では向こうの生産財が安く手に入るようになった。そう考えればフェザーンはこれまで不当に利益を貪っていた、そうも言える。これから益々激しくなるな、対立は」
「うむ……」
独占していた権利を奪われる、得ていた利益が大きければ大きい程その怒りは大きいだろう。その怒りの大きさは昨年の内乱を考えれば分かる。怒りは帝国を二分するほどの内乱になった……。それかな、フェザーンとの対立の激化を心配しているのかな……。
いやそれも有るかもしれないがそれだけじゃないな。エーリッヒはフェザーンの何かを知っている。あるいはフェザーンがエーリッヒを敵視するのはそれを知られたという事も有るのかもしれない。対立する中でお互いに相手の弱みを握ろうとした、そしてエーリッヒはフェザーンの何かを知った……。
「ギュンター、ウチにはエーリッヒの、黒姫一家の調査資料は無いんだよな、これ以外は?」
俺が報告書を指さしながら問いかけるとギュンターは渋い表情で頷いた。
「ああ、社会秩序維持局の時は調べていなかったようだ。所詮は海賊、不穏分子では無い以上気にする事は無い、そういう認識だったようだな」
ギュンターの口調が苦い。認識不足、そう思っているのだろう。俺も同感
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