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愛の妙薬
第一幕その五
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れぞれポケットや懐からコインを取り出す。
「俺は歯磨きを!」
「私は若返りの薬!」
「わしは元気の出る薬じゃ!」
「まあまあ皆さん落ち着いて」
 ドゥルカマーラはそんな彼等を制して言った。
「薬はどれもたっぷりとありますから。幾らでもお好きなだけ手に入りますから慌てないで。ほら」
 そう言って馬車から山の様な薬を出してきた。
「さあさあ順番に。御希望の薬とお金をどうぞ」
 こうしたことは手馴れたものであった。こうして彼は村人達に薬を売っていった。
「凄い人だ」
 皆大体わかっていたがネモリーノは違っていた。ドゥルカマーラを偉大な医者だと完全に思い込んでいた。
「あの人ならもしかして」
 ここで彼はアディーナの顔を脳裏に思い浮かべた。
「僕を救ってくれるかも」
 そして彼は皆が立ち去るのを待った。
 皆薬を買ってその場を後にした。ドゥルカマーラは薬が売れたのでご満悦であった。
「ううむ、今回はかなり売れたのう」
 彼は袋に収めたコインの山を見て嬉しそうに言った。
「これは当分遊んで暮らせるかもな」
「どうしようかな」
 ネモリーノはここで迷った。
「僕の話を聞いてくれたらいいけれど」
 不安に負けそうになった。逃げたくなる程であった。
「えい、勇気を出せ」
 だが彼はここで己を奮い立たせた。
「ここでやらなきゃどうするんだ」
 そしてドゥルカマーラに話し掛けた。
「あの」
 オドオドとした様子であった。
「何ですかな」
 彼はネモリーノに顔を向けてきた。
「先生は何でも不思議な薬を一杯持っておられるそうですけれど」
「ええ、その通りですぞ」
 ドゥルカマーラは胸を張って答えた。
「何ならお見せしましょうか、私の持っている数々の薬」
 そう言って馬車から薬を次々と出してきた。
「どれがいいですかな、水虫を治す薬も元気が出る薬も何でもありますぞ」
 よく見れば単にガラスの瓶に水か酒か何かを入れているだけのようである。だがネモリーノはそれには目をくれない。

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