GGO編
百九話 衝動の絶叫 罪の吐露
[9/9]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
そんなに……強くあれるのは、どうして……?」
その問いを、りょうは予想していたのかもしれない。一瞬だけ微笑すると、その女性めいた顔立ちに、思わず見とれてしまいそうなほどの、強く、真剣身を帯びた光を宿して詩乃の事を正面から見る。そうして、静かに行った。
「……俺は、強くなんてねぇよ」
「え……?」
「よく聞け。詩乃……お前がもし、過去を忘れて、自分と過去を切り離して、罪を無視して生きていられる事をもし本当に《強さ》だと思ってんなら……それはな詩乃。一から十まで、全部間違いだ」
「!?」
リョウの言葉に、シノンは眼を見開く。その瞳が小さく震えていた。
「そんなもんは、絶対に強さなんかじゃねぇ……そんなことしてる奴はな。本当なら、この世に居るべきじゃねぇ位の本当のクズ野郎だ」
「兄貴……!」
「な、なんで……」
戸惑う詩乃に、りょうは続けた。
「人を殺したならな、たとえ原因が何だろうが、どれだけ辛かろうが、自分が殺した奴の無念背負って、自分奪った命の重みや罪と向き合って、一生考え続けるのが正しい姿だ。そうしなきゃいけねぇんだ」
「そ、そんな事……」
再び詩乃は眼を伏せた。そんな事は出来ないと、そう思ったからだ。しかし……
「目を逸らすなっ!!」
「っ!?」
りょうに肩を掴まれて、詩乃は驚きながら正面を向く。りょうと目が合い、目をそらせなくなった。
「自分のしたことから、過去から目を逸らすな!どんなに辛かろうが、苦しかろうが、時間を巻き戻すことなんか出来ねぇし、過去は消せねぇんだ……!向き合うのは、お前の義務なんだよ詩乃!!」
「でも、でも……」
現実の詩乃の苦しみや辛さは、永久に続く。そう宣告される事は、彼女にとってはあまりにも恐ろしい事だった。震えながらそう言った詩乃に、りょうはそれでも引くことなく、押し殺したような声で言った。
「もし苦しかったら、いくらでも支えになってやる。俺も美幸も、全力でお前を助けてやる。だから、向き合う事からは逃げるな、止めるな!頼む。詩乃……」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、詩乃は見た。
「“俺みてぇになるな……!!”」
自分を見るりょうの瞳に……強い、本当に強い、懇願の光が宿った事を。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ