第一幕その三
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そして周りで休息をとっている兵士達に声をかけた。
「一旦宿に向かうぞ。そしてそこで荷物や銃を置いた後当直の者以外は皆自由行動だ」
「はっ」
彼等は一斉に立ち上がり敬礼をして応えた。こういった動作はやはり軍人ならではであった。
「さて」
彼は命令を終えるとアディーナに顔を向けた。
「お嬢さん、また後で」
にいっ、と笑みを浮かべて言った。そして兵士達を引き連れて宿に向かった。
「さあ皆さん」
それを見届けたアディーナは彼等に語りかけた。
「今のうちに今日の仕事の分を終わらせましょう。今日は兵隊さん達のお相手もしなくちゃいけませんし」
「宴だな」
彼等は楽しそうに言った。
「ええ。けれどそれは仕事が終わってから。早く終わればその分だけ楽しめますよ」
「よし」
アディーナの言葉に乗ることにした。
「じゃあ今から頑張ってすぐに終わらせるか。そしてその後は」
「美味い酒に食い物がわし等を待ってるぞ」
彼等は口々に言った。
「では行くとしよう、仕事を終わらせに」
「おう、そして酒を浴びる程飲もうぜ」
「おっさん、あんたはいつも飲んでるだろうが」
「おっと、そうだったかな、ははは」
そしてそれぞれの仕事場に向かった。後には二人だけが残った。ネモリーノとアディーナである。
「アディーナ」
ネモリーノは早速彼女に声をかけた。
「何、またいつもの?」
対する彼女は余裕をもって彼を見ていた。
「いつものじゃないよ」
それに対するネモリーノの顔は必死そのものである。
「アディーナ、僕の気持ちはわかっているだろう」
「毎日聞いているからね」
「じゃあわかってくれよ、君が好きなんだ」
「だからそれも毎日言っているでしょう?」
アディーナはすげない態度で返した。
「私は貴方には合わない、って。だから他をあたりなさい」
「それができないのはわかっているだろう」
「あら、どうかしら」
だが彼女は相変わらずすげない。
「人の気持ちなんてころころ変わるものよ。貴方も私も」
「僕の気持ちは変わらないよ、ずっと。君だけだ」
彼はあくまでアディーナにすがる。
「君以外もう誰も目に入らないんだ」
「そんなの一時の気の迷いよ」
「違う」
ネモリーノは首を横に振った。
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