第一幕その二
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れ位前もって聞いておけよ」
村人達はそう言いながら道を開ける。するとそこに軍の一団がやって来た。
見れば四十人程である。おそらくこの村の宿営のためだけの部隊らしい。おそらく訓練か何かで立ち寄ったと思われる。殺伐としたところはなく穏やかな様子であった。軍服も綺麗で銃もよく手入れされていた。
「やあやあ皆さん」
その中の一人が村人達の前に出て来た。
「お騒がせして申し訳ない。私はこの隊の軍曹でベルコーレという者ですが」
見れば立派な口髭を生やした偉丈夫である。肩の階級章が兵士達のそれよりも立派であった。手には小さな花束がある。
「皆さんに一時の休息の場を頂きたい。よろしいでしょうか」
「喜んで」
「一緒に楽しくやりましょう、束の間の休息を」
村人達は快くそれを認めた。
兵士達は村人達の間に入る。そして共に酒と食べ物、そして談笑を楽しみはじめた。
「何か面白い人ね」
アディーナはベルコーレを横目に見てジャンネッタに囁いた。
「そうね。わりかし格好いいし」
「キザっぽいところもあるけれどね」
見れば軍服の胸のポケットに花なぞを入れている。髭もよく切り揃えてあり髪にも油を塗っている。かなりの伊達男であることはすぐにわかった。
「おや」
ここでベルコーレもアディーナ達に気付いた。
「これはこれは」
そして二人に近付いて行った。
「一体何をする気だ!?」
ネモリーノはそれを見て顔を顰めさせた。
「僕のアディーナに言い寄ったら只じゃおかないぞ」
そう言いながら如何にも不安そうな様子で成り行きを見守った。
ベルコーレはそれに気付くことなく手に持っている小さな花束をアディーナに差し出した。
「可愛らしいお嬢様だ」
そしてその花束をアディーナに差し出した。
「これはささやかな貢ぎ物です」
だがアディーナはそれは手にとらない。じっとベルコーレを見ている。
「どういうつもりだ!?」
ネモリーノは身を乗り出してそれを注視した。
「まさかあいつ」
もう気が気でなかった。ふとアディーナの視界の端に入ったように見えた。だが彼女はそれがわかっているかどうか。顔には全く出さない。ただベルコーレを見据えている。
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