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愛の妙薬
第二幕その十
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内心そう思っていた。
「お若いのはもういりませんかな?」
 そしてここでネモリーノに問うた。
「いえ、僕は」
 彼はそれに対して笑顔で手を横に振った。
「もう何もいりません。だって僕は欲しかったものが今この手にあるんですから」
 そして手の中にいるアディーナを見た。
「そうね、私も」
 アディーナも彼を見た。
「他には何もいらないわ。願いはこのまま永遠に二人でいること」
「左様ですか、それではいらぬお節介でしたな」
「けれどわし等にはお節介はまだ足りませんよ」
「そうですよ、早く薬を下さい」
 彼等も何時の間にかドゥルカマーラの薬を信じるようになっていた。我先に金を差し出す。
「並んで並んで」
 ドゥルカマーラはそんな彼等を宥めた。そしてまた並ばせる。
「さあさあそちらにはこれ、それであちらには・・・・・・」
 金を受け取り薬を手渡す。薬は忽ちのうちになくなった。
「後はお楽しみですじゃ。皆様に幸福が訪れますぞ」
「すぐにですか!?」
「勿論」
 彼は胸を張って答えた。
「このドゥルカマーラは嘘を申しません」
(まあこれ自体が嘘じゃが)
 やはり本音は隠している。
「皆さんが望まれることが適います、そしてこの村は幸せに包まれます」
「それはいい!」
「それも先生の御力ですね!」
「左様、その証拠が」
「僕達ですね」
「はい」
 彼はネモリーノ達に答えた。
「僕達は薬のことは決して忘れません、これは本当です」
「私もです。それでこうやって一緒になれたのですから」
「まあ俺にとってはちょっと妬ける話だが」 
 ベルコーレはまだ苦笑していた。
「これも新しい恋をしろってことだろうな。どうだい、娘さん」
 そこでジャンネッタに声をかけた。
「今度この村に来ることがあったら付き合わないかい?」
「今度って何時?」
「まあ駐屯地がこの地域だからまたすぐに」
「だったらいいわ。今度ここに来たらね」
「よし」
 彼は彼で新しい恋を見つけていた。
「さて、薬も見事全部売れてしまいました」
 見れば馬車の中は空になっていた。
「残念なことにこれで皆さんとお別れしなくてはならなくなりました。しかし御安心下さい」
 彼は大きな身振りをしながら話を続ける。
「私はまたこの村にやって来ます。そしてまた薬を皆さんにお届けします」
「是非お願いします!」
 村人達は皆彼に対してそう声をかけた。兵士達もそれに加わっている。
「すぐに来て下さいよ!」
「待ってますから!」
「はい」
 ドゥルカマーラはそれに恭しく答えた。
「必ず来ます。それもすぐに」
「おおっ!」
 彼等はそれを聞いて喜びの声をあげた。
「されど今はさようなら。次にお会いする時まで暫しのお別れを」
「約束ですよ
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