第二幕その九
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第二幕その九
「他に何か言うことはないの?」
「他にって?」
「うん。あの、僕に言うことがない?その・・・・・・つまり」
「ないわ」
モジモジとする彼に対して言い放った。
「他に何と言えというの?私に」
「・・・・・・わかったよ」
彼はそれを聞いてまた肩を落とした。
「じゃあいいよ。やっぱり僕には兵隊になるのが一番いいんだ」
「また何馬鹿なことを言っているのよ」
「馬鹿だから言うんだよ。どうせ僕は字も読めないしものも知らない。畑仕事以外は何も出来ない男さ。だけれどね」
彼は言った。
「僕だって自分がどういう奴かわかっているつもりさ。だからあえて言わせてもらうよ」
「何?」
「自分の気持ちに素直でいたい、それだけだ」
「それだけ?」
「ああ、他に何があるっていうんだよ」
今度は彼が背を向ける番であった。
「だから僕は行くよ。望むものが手に入らなくて何が自由なんだ、そんなもの何の意味もないよ」
「ネモリーノ」
「さようなら、君が言うよりも僕の方から言うよ。もう永遠にお別れさ」
「永遠・・・・・・何言っているのよ」
アディーナはその言葉に焦りを覚えた。そして彼に対して強い声で言った。
「待ちなさい!」
「嫌だよ」
「いいから聞きなさい」
そんな彼を無理矢理引き留めた。そして言った。
「貴方がまだ人の話を聞く意志があるのなら聞きなさい、よおくね」
「何をだい?」
彼は振り向いた。アディーナはそんな彼を待っていたかのように口を開いた。
「もうこうなったら全部言うわ。聞きなさい」
「うん」
彼は完全に飲まれていた。そして彼女の言葉に耳を集中させた。
「貴方が好きよ。貴方が本当に好きよ」
「本当!?」
つい先程までの余裕は何であったのだろうか。彼は思わず聞き直した。
「この場で嘘を言って何になるのよ」
アディーナはそんな彼を見上げて言った。
「貴方は私の可愛い人よ、それ以外の何者でもないわ。そしてね」
「そして・・・・・・」
「貴方と一緒になりたいわ。そして何時までも幸せに暮らしたいわ。私の言いたいことはそれだけ」
「あの」
ネモリーノは今聞いた言葉を信じられなかった。思わず聞き直した。
「それ・・・・・・本気!?」
「本気よ」
「冗談じゃないよね」
「嘘だと思うなら」
彼女はそんな彼に対して言った。
「その頬っぺたをつねって御覧なさい。よくわかるわよ」
「わかったよ。つねるまでもないよ」
ネモリーノは満足した息を吐き出しながら言った。
「先生は僕に愛をくれたんだ。これ以上の贈り物はないよ」
「そうよ。ネモリーノ、貴方は私の想い人よ」
「本当なんだね、アディーナ」
彼はまた問うた。
「本当に君は僕のものなんだね?僕の恋人なんだ
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