第二幕その九
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ね?」
「・・・・・・何度も言わせないでよ」
彼女は頬を赤らめさせていた。
「貴方が好きよ、本当に」
「ああ、神様」
ネモリーノはそれだけで満足であった。もう他には何もいらなかった。
「有り難う、本当に有り難うございます。僕の望みはもうありません」
「私はあるわ」
「えっ!?」
「貴方と何時までも幸せに暮らすことを」
そう言ってネモリーノの手をとった。大きな、それでいて温かい手であった。
「この手で私を包み込んでね。この優しい手で」
「うん・・・・・・」
彼は頷いた。そしてアディーナを抱き締めた。
アディーナも彼を抱き締めた。そして二人は広場へ向かった。そこには兵士達もいた。
「おや?」
ベルコーレもいた。彼は二人の姿を認めて顔を上げた。
二人は仲良く手を取り合って歩いている。ベルコーレはそれを見て頬を緩めた。
「やっと一緒になったか」
だがそれはすぐに引っ込めた。
「ちょっと待った娘さん」
厳しい顔をしてアディーナに問うてきた。
「これは一体どういうことかね?私との式を途中で放り出してその男と一緒に歩いているとは」
「見ての通りよ」
アディーナは満面に笑みをたたえてベルコーレに言った。
「貴方もわかっていたのでしょう?」
「確かに」
(どうやらこの娘は俺よりも遙かに戦上手だったようだな)
彼はここで自分の考えも見透かされていることを悟った。
「まあいいとしよう」
結末はわかっていたので迷うところはなかった。
「どのみち女は他にも一杯いる。軍人をやっていれば苦労することもあるまい」
「あっさりしているのね」
「軍人は引き際も見極めないとな。おい、そこの若いの」
そしてネモリーノに声をかけた。
「あんたも幸せにな。またこの村に来たら一杯やろう」
「はい」
ネモリーノは幸福で頭が一杯だった。にこやかな笑みでそれに答えた。
「絶対アディーナと幸せになります」
「ああ、幸せにな。それは祈ってるよ」
「ほっほっほ、どうやらわしはまた人を幸せにしてしまったようですな」
ここでドゥルカマーラも姿を現わした。
「先生」
ネモリーノは彼に顔を向けた。
「おお、若いの。どうやら願いは適ったようじゃな」
「はい」
彼は答えた。
「これも先生のおかげです」
「そうじゃろ、そうじゃろ」
彼は上機嫌でそれを聞いていた。
「わしにできぬことはないからの。どんなことでも思いのままじゃ」
ここで早速演技の上手いところを見せていた。
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