第二幕その五
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を見て思わず我が目を疑った。
「これは一体どういうこと!?あのネモリーノが」
ネモリーノはまた娘達に囲まれていた。それでアディーナには気付かなかった。それでも彼は喜んでいた。
(アディーナもすぐ来るさ、そして僕の側に)
だがそう浮かれるあまり実際に彼女が来ても気付かなかったのだ。滑稽な事態であった。
「先生」
アディーナは側にいたドゥルカマーラに顔を向けた。
「一体何事ですか!?」
(おや)
ドゥルカマーラは彼女を見てそこに他の娘達とは違ったものを感じた。
「いや何」
だが今はそれについて思いを巡らさずアディーナの話に答えることにした。
「あの若者はわしの薬を飲んだのじゃ」
「薬を!?」
「そうじゃ、愛の妙薬をな」
「愛の妙薬」
それを聞いたアディーナの眉が怪訝そうに歪んだ。
「うむ。飲めばどんな娘にも惚れられるという魔法の薬じゃ。わしの誇る自慢の薬じゃよ」
「そうなのですか」
「うむ。普通は飲んでから一日経ってから聞くのじゃがのう」
「一日」
アディーナはそれを聞いてハッとした。ネモリーノの言葉を思い出したのだ。
(まさかあの時私に一日だけ待ってくれって必死に頼んでいたのは)
彼女は事の真相がわかってきた。
「ところがのう」
だがここでドゥルカマーラがまた言った。
「あの若者はすぐに効いて欲しいとまた買ったのじゃ。たっぷりとな」
「たっぷりと」
「そうじゃ。かなり切羽詰っておったな。それでお金を作ってわしのところにまた来た」
「お金を作って」
「そう、兵隊に志願しての」
「兵隊に!?」
アディーナはそれを聞いて思わず声を挙げた。だがすぐに口を閉ざした。しかしそれはネモリーノには聞かれていなかった。
「ネモリーノ、あっちへ行きましょう」
ジャンネッタ達が彼を誘っていた。
「木の下で舞踏会。皆で踊りましょうよ」
「うん」
ネモリーノは口元も目元も極限まで緩めてそれに応えた。
「行こう、そして皆で踊ろうよ」
「ええ」
そして彼等はネモリーノの家から少し離れた木の下に向かった。その場にはアディーナとドゥルカマーラだけになった。
「先生」
アディーナはあらためて彼に尋ねた。
「それは本当の話なんですか!?ネモリーノがそんなことを」
「本当です」
ドゥルカマーラは答えた。
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