第一幕その一
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り貴方とアディーナは合わないと思うわ。あの人気が強いし」
「だから好きなんだよ」
ネモリーノはそれに対して言った。
「僕は彼女のそういうしっかりしたところが好きなんだ。そして可愛いし頭もいいし本も読むことができる。本当に素晴らしいと思わないかい?」
「まあね」
ジャンネッタもそれには同意した。
「彼女と一緒になれたらなあ。他には何も要らないよ」
ネモリーノはうっとりとした顔で言った。目元は緩み口には笑みが零れている。
「本当に好きなのね」
「だから前からそう言ってるじゃないか」
ネモリーノは口を尖らせた。
「僕は彼女しか目に入らない。他には何も要らないんだよ」
「お金も?」
「それが何になるというんだ」
彼はあまり裕福ではない。隣の村に金持ちの叔父がいる。だが彼はそれをあまり意識してはいなかった。
「お金は必要なだけあればいいんだ。僕はそんなものはどうだっていいんだ」
「そうなの」
「お金があってもアディーナがいなければ何にもならないから」
そしてまた言った。
「そんなもの欲しくとも何ともないんだ、僕にとっては」
「あら、無欲なのね」
ジャンネッタはまたからかうようにして言った。
「けれどそれじゃあ駄目よ」
「何故だい?」
「女っていうのはね、お金も見るのよ。、ましてや貴方ときたら」
「僕ときたら!?」
ネモリーノは彼女の言葉に怪訝そうな顔をした。
「文字は読めないのはいいけれど外見も野暮ったいし頼りないし。お金がなかったらとても女の子にはもてないわよ」
「だから他の子にもてても嬉しくないんだ。アディーナにもてないと」
「あらあら、本当に重症ね」
彼女はそれを聞いてもうお手上げという仕草をしてみせた。
「けれど諦めた方がいいと思うのは本当よ。貴方ではとても彼女の心を射止めることはできないわ」
「そんなことわかるわけがないじゃないか」
「あらあら」
そう処置なしと言いたげであった。
「けれどそのうちわかるわ。まあその時になって落ち込まないようにね」
そう言うと彼女は皆のいるところへ軽い足取りで向かった。あとにはネモリーノだけが残った。
「何だい、いつも僕をからかって」
彼は渋い顔をしてそう言った。
「僕の気持ちを知っているのなら黙っていてくれよ。もしこれがアディーナの耳にでも入ったら」
そこでそのアディーナの顔を思い出した。
「彼女が僕の恋人だったらなあ。本当にどれだけいいか」
彼は溜息をつきながらそう呟いた。
「恋人だったらなあ。彼女が僕を愛してくれさえいてくれたら」
半ば恍惚とした顔になった。
「他には何もいらないのに」
そして皆のいるところに向かった。見れば皆輪になって誰かの話を聞いている。
「彼女だ」
ネモリーノはその輪の中
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