第一幕その七
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はまた言った。
「貴女にはその力がおありです」
「そうでしょうか」
「はい。今あそこにいる者達ですが」
マニフィコとその娘達を指差す。
「あの者達は所詮は道化です。近いうちに道化に相応しい目に遭うでしょう」
そして今度はチェネレントラに対して言った。
「ですが貴女は違います。貴女のその御心は私は知っているつもりです」
「有り難うございます」
「ですからその御心に相応しい幸福があらなければなりません。そしてその幸福は」
言葉を続ける。
「私が授けましょう」
「貴方が」
「はい」
アリドーロはそれに答えて頷いた。
「その為にこちらに参ったのですから」
「お気持ちはわかりますが」
だがチェネレントラの不安そうな顔は変わらなかった。
「何故私にそこまでして下さるのですか」
「先程の御礼です」
アリドーロはそう答えた。
「貴女は先程私にパンとコーヒーをくださいましたね」
「はい」
「それへの御礼です」
「そんなことで」
だが彼女はそう言われても信じようとはしなかった。
「私をからかっているのではないですか?」
「滅相もない」
だがアリドーロはそれを否定した。
「宜しいですか」
「はい」
「御心を高く持って下さい。貴女はその気高く優しい御心故に救われるのですから」
「あの」
だがチェネレントラはそれでも表情を暗いままにしていた。
「一体何のことかわからないのですけれど」
「それでしたら」
彼はそれを受けて語りはじめた。
「貴女も神は信じておられますね」
「はい」
チェネレントラはそれに答えた。
「勿論です」
「ならば話が早い」
アリドーロは話を続けた。
「神は心優しき者をお救いになられます。そう、貴女のような方を」
「私を」
「そうです。その為に私はここに来たのです。神は常に天界の玉座にて貴女を見ておられます」
「何と」
「神が貴女を救われるのですよ。今までの苦労、そしてその御心をお知りになられて。聴こえませんか」
チェネレントラに語る。
「神の御声が。さあここを出ましょう」
「けれど」
「御心配なく。彼等も宮殿に向かいます。貴女に対して何かを言う者はいません」
そう言ってチェネレントラを安心させた。そして彼女を裏から台所から出して導く。しかしチェネレントラはそれでも行こうとはしなかった。
「おや」
アリドーロはそれを見て言った。
「まだ戸惑っておられるのですかな」
「はい」
彼女は首を縦に振ってそれに応えた。
「信じられません、そんなお話」
「今はそうでしょう」
彼はにこりと笑ってそう言った。
「ですが徐々にわかってきます」
「そうでしょうか」
「ですからこちらへ。そして馬車に乗りましょう」
彼女をさらに
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