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EP.8 ワタルのS級試験(後編)
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てたけど何だったのだろうか?
彼の家はもちろん覚えている。何度か入った事があるしな。
カナに「男はそうされると喜ぶ」と言われてやった事だが、ワタルは喜ぶんじゃなくて困っていたと思う。いや、困ったように見せかけて実は喜んでいたのか?
……などと、冷静に考えていたが(現実逃避ともいう)、実は私……ピンチだ。
今、ワタルに肩を貸しているのだが……顔が近い! 密着してる! ものすごく嬉しいけど恥ずかしいし……一体何を話したらいいんだ!?
心臓の音うるさいけど……聞こえてないよな……?
「あー、頭痛え、気持ち悪ぃ……」
「飲みすぎるからだ、馬鹿者が……」
ああ、馬鹿は私だ! なんでこう、口が悪いんだ、私は……。
「……サンキュー、エルザ。ここでいいよ」
「え?」
そんな事を考えて自己嫌悪に陥っていた所、彼の家の近くに来ていた事に気付かなかった。
え、じゃあもうこの時間は終わり?
「いや、え? じゃなくて……」
「私も泊まるぞ」
この時間が終わるのがなんか悔しくて、こんなことを言っていた。
「……一応聞いておこうか、どこに?」
「ワタルの家に」
こうなったらもう引けない、と思って、意固地になってしまった。
「だから、いつも言ってるだろ、エルザ。年端もいかない女の子が男の家に泊まるもんじゃないって……イテテ……」
「ホラ、そんな状態なのに、明日の朝大丈夫なわけないだろ。だから泊まる」
「いや、大丈夫だって……」
あまりにワタルが拒むので、いつもは抑えている不安がつい頭をよぎり、言葉にしてしまった。
「……ワタルは私の事嫌いか?」
今回のS級昇格もそうだけど、最近ワタルが遠く感じてしまう。
私はワタルの事が……す、好き、だ。
でも、彼は……私の事が嫌いなのだろうか? だから泊まるのを拒むのだろうか?
「……なんでそんな事を聞くんだ?」
「答えて、ワタル……」
いつになく、弱弱しい声が出てしまった。
どうしたんだろう、私は……ワタルと同じで強くあろうとしているのに、これじゃ……
「……嫌いな訳ないだろう? 会ってから……大体3年ぐらいか? ……その間、俺がお前を嫌いになった事なんて1度も無いよ」
嫌いになった事なんて無い……。その言葉に私は安心して、もう一歩踏み出そう、と思った。いつだって、ワタルの言葉が私に勇気をくれるんだ……。
「じゃあ……じゃあ、私の事はどう思ってる?」
その言葉に、彼は驚いたように私を見た。
私の好きな彼の目が私を捉え、私も彼の目の中に自分の顔が映るくらいに見た。
……それからどのくらい経っただろうか? 彼は遂に口を開いた。
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