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EP.8 ワタルのS級試験(後編)
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つも言ってるだろ、エルザ。年端もいかない女の子が男の家に泊まるもんじゃないって……イテテ……」
ああ、駄目だ。大声出すと頭に響く……。
「ホラ、そんな状態なのに、明日の朝大丈夫なわけないだろ。だから泊まる」
「いや、大丈夫だって……」
「……ワタルは私の事嫌いか?」
エルザは立ち止まると、目を潤ませながら上目遣いで聞いてきた。
寒さで紅潮した頬が何とも色っぽ……って、違う、違う。
「……なんでそんな事を聞くんだ?」
規律に厳しいエルザの事だから、酔ってるっていう線は無い……だろう。
じゃあ何故そんな事を聞くんだ?
「答えて、ワタル……」
エルザの声は心なしか弱弱しかった。なので、俺は真剣に考える事にした。
「……嫌いな訳ないだろう? 会ってから……大体3年ぐらいか? ……その間、俺がお前を嫌いになった事なんて1度もないよ」
エルザは、ヤツボシの……俺の一族の事を知らないとはいっても、初めて俺を受け入れてくれた人だ。嫌いになんてなるはずがない。寧ろ、好きだ、と言えるだろう。
でも……だから怖かった。エルザに俺の一族の事を話そうとした事はあったけど、それで彼女が離れて行ってしまうのがどうしようもなく怖く、話せなかった。自分の臆病さに嫌気が差す。
「じゃあ……じゃあ、私の事はどう思ってる?」
そう言ったエルザの顔は真っ赤だった。
その理由が寒さではなく、羞恥で、というのは流石に俺にも分かった。
エルザは……俺にとってのエルザは仲間であり、家族であり、理解者であり、そして……
「……離れたくない人、かな」
どのくらい考えただろうか? 覚えていない。
エルザの目に自分の姿が映るほど魅入ってしまい、時間の感覚がなくなるほど考えた結果、出た答えはそれだった。
答えた瞬間に、1つの疑問が浮かんできた。
エルザは俺の事をどう思っているのだろうか……? それを聞こうとした瞬間だった。
「なあ、エル……ッ!?」
俺の頬に、何か柔らかいものが触れ、疑問は吹き飛んでしまった。
「ッ……S級昇格のお祝いだ。……また明日な、ワタル」
そう言ったエルザは寮の方に走って行ってしまった。表情は分からなかった。
俺はただ呆然と、頬をさすりながらそれを見送る事しかできなかった。
「……参ったな……」
どうしたものか、と俺は頬が熱を持ち始めたのを感じながら呟いた。
……また失いたくない理由が1つ増えちまった。
SIDE OUT
SIDE エルザ
ワタルのS級試験昇格祝いの宴の後、私は彼を彼の家まで送っていくことになった。
皆ニヤニヤとし
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