原作開始前
EP.8 ワタルのS級試験(後編)
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声を立てることなく、だけど、胸中ではトキの声を挙げながら、ワタルは右手のみの鎖鎌をギルダーツの背後から振るった。
「フッ!」
「!? ……チッ!」
しかし、経験でワタルを大きく上回るギルダーツは、その培った勘によって鎌を回避、ワタルはそれに舌打ちすると距離を取った。
理由は簡単。ギルダーツの拳に届く範囲に居れば、粉砕によって身の安全は保障できないからだ。足を止める暇なんて皆無だった。
「フッ……こっちに来たか、ワタル」
「……意外か、ギルダーツ」
両者とも口元に笑みを浮かべて向かい合う。
ギルダーツは楽しそうに、ワタルは自分より高みにいる者を前にした高揚で……。
「そうだな。てっきり、ラクサスの方に向かうと思ってたんだが……理由を聞いてもいいか?」
「今は試験中だぜ、ギルダーツ!」
「ッ! 何!?」
ワタルが右手を大きく振るうと、初撃の直前に、雪の中に隠していた左手の鎖鎌の鎖がギルダーツを拘束した。
ワタルはそれを確認する前に走り出した。
――これは小細工。ギルダーツ相手じゃ役に立たない! ……でも、一瞬だけ気を逸らせれば!
「“魂威”!!」
「クッ!……ソラッ!」
「ウグッ!」
ワタルの“魂威”は右腕で防御され、ギルダーツは左の拳でワタルを殴りつけた。
ミートの直前に後ろに跳んだ事と、地面が雪であった事が幸いし、大したダメージは受けなかったが、ギルダーツのやったことを理解したワタルは戦慄した。
――“魂威”を、魔力を集めただけの腕で防御された!? どれだけ魔力集めたんだ、あのオッサン……!?
「フー……お前の魂威、痛いから嫌いなんだよな……」
「……ホントは痛いじゃ済まないんだけどな……」
軽口を叩きながらも、ワタルは次の手を模索していた。
そして、鎖鎌をしまうと言った。
「よし……。じゃあ、改めて……勝負だ、ギルダーツ!!」
「……ああ、かかってこい。どれだけ強くなったか見てやるよ……」
「抜かせ!」
ワタルは足の魔力を爆発させて、雪煙ができるほどに雪を蹴って走った。
対してギルダーツは動かない。
――まずは足元!
ギルダーツの目前にまで迫ったワタルは急激に身を落として足払いを掛けた。
ギルダーツはそれを少しジャンプして避けると、手をかざした。
「ッ!!」
――圧力、後退は……詰む! なら……前へ!!
「! ほう……」
ギルダーツの粉砕に対して、ワタルはギルダーツの腕の内側まで前進することで回避。
服が少し破れたが、気にする余裕なんてなかった。
「もう一発……“魂威”!
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