原作開始前
EP.7 ワタルのS級試験(前編)
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ツに近付いて声を掛けた。
「は、はじめまして、エルザ・スカーレットです」
「ワタル・ヤツボシです」
「……ヤツボシ?」
「…………はい」
「……ワタル?」
俺の名字を聞くと、ギルダーツは驚いたようにマスターを見た。
何か言われるんじゃないか、と少し怖くなり、身を固くした。エルザにはそれが分かったようだっただが……。
だが、マスターが頷くのを見ると、彼は破顔した。
「そうか……。よろしくな、ワタル、エルザ。俺はギルダーツ・クライヴ。皆からは“オヤジ”って呼ばれてるが……まあ好きに呼べ」
何も恐れず、ただ信じる。そんな光と自信が彼の目には満ち溢れていた。
優しく、温かいその光は父親を連想させ、皆が彼を“オヤジ”と呼んで慕う理由が分かった気がした。
温かいのだ、彼の仲間に対して発する雰囲気は。
「……んで……」
「ん?」
「……なんで……あなたはそんなにも温かい目を俺に向けるんですか?」
「ワタル、一体何を……?」
エルザは何を言っているのか分からない、と言う顔をしていたが……思わず質問してしまった。それに対して、彼は優しく笑うと言った。
まるで、「太陽は東から昇って西に沈む」という常識を口にするように。
「何故って……マスターが認めたんだ、なら俺がどうこういう事じゃない。違うか、妖精の尻尾の魔導士、ワタル・ヤツボシよ?」
“妖精の尻尾の魔導士”……その言葉はギルドに対する誇りと、仲間に対する慈しみに溢れていて……嘗て失った物を思い出しそうになって、不覚にも涙が零れそうになった。
「……いえ、違いません。すみません……いや、悪かったな、ギルダーツ」
「オウ、気にすんなって……それより、勝負してみるか?」
「……は?」
無意識に使っていた敬語をフランクな口調に戻し、握手をした。
だが、その後に続いた言葉は俺には理解できなかった。
「やってやれ、ワタル!」「どのぐらい持ちこたえられるか見てやるよ!」「おいオヤジ、少しは手加減してやれよ」……
「は、は!? え、なんでそうなるの!?」
「諦めろ、このギルドに入った男に対する洗礼みたいなもんだよ」
「がんばれ、ワタル!!」
苦笑するグレイや応援するエルザの声に、これは避けられないな、と思った俺は……どうやら自棄になってギルダーツに飛びかかったらしい……。
“らしい”というのは……その後の記憶が何故か無いからだ。目覚めた時には体中が痛くて、まともに起き上がれなかった。
エルザの話では、ギルドの壁を破って何十メートルも飛んでいったそうだけど……その時は正直信じられなかった。
……後日、エルザの話と寸分違わないように飛んでいった新人のナツの姿を見
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