第5話 紅き瞳
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バックアップとの連絡は途絶えたままなのだろう?」
俺の問い掛けに、無言で首肯く長門。ただ、陰陽入り交じった気を発して居る理由は良く判らないのですが。
それならば……。
「取り敢えず、有力な土地神に状況を聞くトコロから始めるべきですか」
そんな俺の独り言に、先ほどまで陰の気を発して居た長門が、少しの陽に分類される雰囲気を発した。これは、おそらく興味。
多分、有力な土地神、と言う存在……もしくは言葉に興味を持ったのでしょう。
「土地神。西洋風に言うと土地に憑いている精霊や守護天使に当たる存在。天使の階級で言うなら、プリンシパリティ。その土地で起きている霊的な厄介事ならば、こいつらに尋ねたら大体の事は判るから、最初に情報収集を行う相手としたら、こいつらが正しい」
一応、事態をかなり楽観視した台詞を口にする俺。
ただ、ここが西宮だとすると、この街の有力な土地神は、それなりに神格を持った土地神の可能性が高いから、こちらもそれ相当の態度で相対す必要が有るのですが。
まして、事態がもう一段階、先に進んでいる可能性もゼロではないのですが。
「……と言う訳やから、長門さんには、ここから近い。そして、大きな神社かお寺に案内して貰いたいんやけど。頼めるかな」
☆★☆★☆
静謐な、と表現すべき金曜日の神社は、本当に人の気配のしない、少し不気味な空間となっていた。
確かに、平日。更に、真冬の真っただ中と言う二月十五日では、神社を拝観する人間が少ないのは当たり前だとは思うのですが、それでも……。
まるで、世界自体に迫りつつ有る異常事態を人々が察知して、出来るだけ行動を控え、これから起きる可能性の有る災厄に備えようとしているかのように、俺には感じられた。
いや。それでも、これは好都合と考えるべきですか。
少し、頭を振った後、陰の気を振り払ってポジティブな思考でそう考える俺。
人影の存在しない神社の境内から、更に人が訪れる可能性の低い鎮守の森に移動する俺と長門。
その場に召喚用の簡易結界を施した後、つま先を二度踏み鳴らすような仕草を行い、口訣を唱え、導引を結ぶ。
呼び寄せるのはこの神社に祭られた産土神。国生みの夫婦神の最初の子供で有りながらも、葦の舟によって流された神。
………………。
奇妙な空白。その空白を支配していたのは、少し曇った弱めの陽光と、現在の季節に相応しい長門の視線のみで有りました。
この場所で土地神を召喚する仙術を行使しても何の反応も示さない。俺の口訣が間違っていたのか。それとも、俺の呼び掛けが届かなかったのか。
それとも……。
いや。同じ水に関係するモノ同士。まして、共に天津神よりまつろわぬ者
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