第4章 聖痕
第46話 イザベラ登場
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止めな、アルタニャン卿」
この一触即発の事態を招き寄せた張本人が、ここで割り込みを掛けて来た。
その声を聴いて、ようやく、俺の鼻先に突き付けられた杖を収めるアルタニャン卿。
しかし、この馬車中だけの出来事とは言え、イザベラ姫の影武者役のタバサの事を謀反人と呼び、御付きの侍女の事をイザベラ姫と呼ぶこの迂闊な男に、重要な仕事を任せる事が出来ると言うのでしょうか。
どう考えても、こいつに出来る仕事なら、ジョルジュやジルでも熟せると思うのですが。
俺を陰の気の籠った瞳で見つめるシャルル・アルタニャン。
どうも、男性騎士と言う相手には嫌われる運命に有るようですね。大して嫌われるような事をした覚えもないのですが。
間違いを軽く指摘した程度なんですけどね。俺としては。
そんな皮肉に満ちた、あまり褒められる類ではない思考に囚われていた俺の横顔に視線を感じる。
この視線の主は……。
【わたしなら気にしてはいない】
俺を見つめていた俺の主人が、普段通りの雰囲気でそっと、【告げて】来る。
それは、彼女に相応しい静。
対して、俺は平静を失っていた、と言う事なのでしょうか。
タバサに対するアルタニャンの台詞や、今回の任務の危険度に対して。
少し、ため息のように息を吐き出した後、軽く頭を振って、回転の悪くなった頭に喝を入れる。
そして、
【大丈夫。俺は平静やで】
やや微妙な状況だった事は棚に上げて、タバサに対してそう【伝えて】置く。
そう。こんな煮えた頭では、冷静な判断が出来る訳は有りません。冷静な判断を下せなければ、悪手を打つ可能性も高く成りますからね。
まして、何時までも、そんな同じ任務に就く仲間内の間でいさかいのようなマネを続ける訳には行きませんから。
何故ならば、既に、この馬車の中にも、ポルトーの住民たちが放つ熱狂的な歓呼の声が聞こえ始めていたのですから。
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