第4章 聖痕
第46話 イザベラ登場
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感が有るのは、ティンダロスの猟犬の際に付けられた右手首の傷痕ではなく、ショゴスの中からタバサの精神体を救い出した時に付いた左手首の傷痕のような気がしますね。
そう。タバサのみ、二度、関わりが有ったと言う点が。
そして、おそらく最後の傷痕も、誰かを護る為。誰かを救い出す為に刻まれる可能性が高いのでしょう。
其処まで考えた刹那、突如、タバサが捲る和漢に因って綴られた書物のページが発する音にのみ支配された来客用の寝室の扉が、少し躊躇いがちにノックされた。
そして……。
☆★☆★☆
「それで、今日は俺も連れて出頭しろ、と言う事なのか?」
最後の確認の為に、一応、そう聞き返す俺。出来る事ならば、そんな面倒な事からは逃げ出したいのがホンネ、なのですが……。
何故ならば、ガリアの姫との直接の面識など、俺は必要としていませんから。
それに、騎士団の長との面識も。
そう。普段ならば、リュティスまで転移魔法を使用しての移動の後、ヴェルサイユ宮殿ならぬ、ヴェルサルテイル宮殿の庭園内に有る離宮の内のひとつ、プチ・トロワと呼ばれるイザベラ姫の宮殿に入って行くタバサを見送る俺なのですが、今日に関しては、俺まで出頭を命じられるって……。
時刻は午前十時。夏本番目前のリュティスの空は良く晴れ渡ってタバサの瞳と同じ色を示し、風は適度の湿り気と、涼を運ぶ。
俺の問い掛けに、俺を少し見つめた後に、ひとつ首肯くタバサ。
その瞳。そして、表情ともに普段通り。但し、気の質が普段とは違っていた。
これは……。焦燥?
俺までもがガリアの機構。……統治機構に組み込まれる事に対する焦りか。
装飾過剰で、矢鱈と仰行な造りのヴェルサルテイル宮殿。つまり、バロック建築風の宮殿内に有る離宮の内のひとつ、プチ・トロワは過剰なまでの装飾を抑え、どちらかと言うと荘厳なとか、崇高な、と表現すべき雰囲気を持つ建物と成っていた。
但し、兵が駐屯するようなタイプのお城と言う雰囲気はなし。
おそらく、この宮殿は、双方とも軍事的な拠点と言うよりは、行政府の中心としての役割を持った宮殿と言う事なのでしょう。
「タバサ。気にする必要はない」
俺が、そう気休めに等しい言葉を口にする。
但し、気休めは気休め。この流れて行く事態を止める術は、今の俺には有りませんから。
そして、ガリアの統治機構としては、使えるモノは使う。この姿勢は正しい。
まして、タバサは、現在はそのガリアよりの禄を食んでいる人間です。その人間の使い魔を使っていけないと言う法はないでしょう。
俺の事を真っ直ぐに見つめていたタバサが、少し首肯く。
但し、彼女の心から、すべての陰の気を払う事は……出来ませんでしたが……。
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