第一部第二章 銀河の群星その八
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「そして技術班ですね。これはどうしましょう」
「技術班は統合します。ただし削減はしません」
「何故ですか?」
「それぞれの系列で競わせてみたいです。それから新たな兵器が開発されるかと」
「成程、そうなれば今までのよりも遥かに優れた兵器が期待できますね」
八条はそれを聞いて笑みを浮かべた。
「はい。兵器開発も一つの系統だけではあまり進歩しませんから」
「そうですね」
これは八条にも思い当たるところが多かった。日本では軍需産業は一つの兵器は一つの産業が扱う傾向にありその質は高いが今一つ進歩が見られていなかったのだ。
「閣下、これからはさらに忙しくなりますよ」
キロモトは彼の顔を見て言った。
「何せ未曾有の軍が出来上がるのですから」
「それは覚悟のうえです」
彼は答えた。
「むしろやりがいがあるというものですよ」
彼は仕事が多く困難であればある程働きたがる性質の人間であった。
「それは頼もしい。私は仕事はなるべくしたくないという考えの人間でしてね。正直貴方のような人が側にいてくれると実に有り難いのです」
「それはどうも」
彼は特に迷惑にも有り難くも思わず答えた。自分が仕事ができればそれでかまわなかった。
「ではお願いしますよ。連合軍のこれからは貴方の双肩にかかっているのですから」
「はい」
それからすぐ米中露においても選挙が行なわれた。そして中央軍の参加が決定された。これはそれまで何としても己が権勢を保とうと腐心してきた彼等からは思いもよらぬ行動であった。
「まあそれでも何かと口は出そうとするだろうがな。連中の考えは嫌という程わかる」
八条は新設された連合中央政府国防省の建物の執務室で呟いた。
その部屋はあくまで実務を優先させた質素なものである。そして彼は椅子に座り窓から見える景色を眺めていた。国防省はシンガポールに置かれていた。彼は窓の向こうに見える椰子の木を眺めていた。
「連中とは長い付き合いだ。その間にどれだけ煮え湯を飲まされてきたことか」
彼は少し怒気を含んだ声を漏らした。
「だがそれも全て折り込み済みだ」
彼はそう言うと席を前に戻した。
「軍がなければ金を使ってくるだろうがな。しかしそれも昔から知っている」
彼等の経済力は他国と比べてもかなり高い。経済力あっての大国であるのだ。
「しかしそれならうちにも対処方法が充分にある」
そう言うと机の上にあるホットラインを手に取った。一千年前のそれと比べるとかなり小型でしかも光による通信で速い。
「あ、どうも八条です」
彼はあるところに電話をかけた。
「はい、お久し振りです。一つお願いしたいことがありまして」
彼はそうやら知り合いに電話をかけているようだ。
「そうですか、ご協力して頂けますか。感謝いたします」
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