第三幕その一
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れから話を聞いた。
「つまり二人共に気があるのじゃな」
「つまりそういうことね」
「あとはどちらか選ぶだけかも」
「ほっほっほ」
マニフィコはそれを聞くと上機嫌で笑いだした。
「それはよいことを聞いた」
「そうなの?」
「そうじゃ。つまりわしの娘が殿下の妃になるのは確実じゃからな。これはよいことじゃ」
「言われてみれば」
「そうなるわね」
「一方が溜息、一方が笑顔」
彼はまた言った。
「どちらにしても幸福が待っておるわ」
「じゃあ私達にも」
「幸福が待っているのね」
「その通りじゃ」
彼は娘達に笑顔でそう答えた。
「今の我が家の惨状は知っていよう」
「はい」
二人はそれを聞くと暗い顔になった。
「借金まみれで家にある物はあらかた質屋行きになっておる。わしの長靴までな」
「そうよね」
「私達のものだってそうだし」
「だがそれももう少しの辛抱、借金は消えてなくなろう」
「そうよね」
「お妃になるのだから」
「逆にわしのところには嘆願書の山が来るであろうな。それこそが我が望み」
話しているうちに機嫌がよくなってきた。そして言葉を続けた。
「よいな、父を見捨てるでないぞ」
「ええ」
「勿論よ、御父様」
「それさえわかっていればよい。ううむ、見える、見えるぞ、誰も彼もがわしのところにやって来るのが」
さらに続ける。
「お妃様にとりなして下さいと。チョコレートや金貨を持って来てな。話しておきましょう、と答えるともうそこには香水と化粧で武装した貴婦人が立っている。銀貨を持ってな」
取らぬ狸の皮算用に耽っていた。しかし彼はそれには気付かない。
「それにもまあ宜しいでしょうと返す。休んで目を開けるとベッドの周りにはわしに頼みごとをする者達の行列が取り囲んでおる。引き立てに罪の許し、就職口、入札に教授になりたいだの鰻の漁、そして嘆願書に囲まれるのじゃ。陳情書もあるぞ」
「何て素晴らしい」
「黄金みたい」
「黄金か」
すぐにその言葉に反応した。
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