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サロメ
第二幕その二
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第二幕その二

「果物を持って参れ」
「わかりました」
 声をかけられた者はそれに応える。そして暫くして葡萄やオレンジが運ばれてきた。王はそれをサロメの前に置かせたうえでまた声をかけてきた。
「さあサロメ、食べるがいい」
「果物をですか」
「うむ、ここでな」
 サロメが食べる姿を見るつもりだったのだ。
「その口でな。よいか」
「お腹がすいていません」
「何と」
 王はそれを聞いて声をあげてきた。
「そんな筈が」
「まことでございます」
 しかしサロメは述べる。
「ですから」
「そんな筈が。だが食べてみよ」
 無理をして言ってきた。
「そなたの口でな。その紅く小さな口で」
「ですが」
「ほら、御覧なさい」
 王妃は言う。
「サロメは疲れているのです。ですから」
「ううむ」
「時は来た」
 ここでヨカナーンの声がした。
「いよいよ御子が来られるのだ」
「あの男ね」
 王妃はその声の方に顔を向けて険を浮かべてきた。
「忌々しい」
「そなたのことを言っているのではない」
 王はそう言って妃を落ち着かせる。
「そうであろう?」
「いえ」
 しかし王妃はその言葉に首を横に振る。
「言っていますわ、いつも」
「それはだな」
「私を忌まわしい淫猥な女だと。いつも言っていますわ」
「しかし」
「私は予言は信じておりませぬ」
 きっとした声で言ってきた。
「未来のことは誰にもわかりませぬ。あの男は私に対して悪口を言っているだけなのです」
「聞き流せ」
 王はそう述べる。
「よいな」
「貴方はあの男を恐れておられますね」
 王妃は不機嫌な顔を今度は王に向けてきた。そのうえでまた言う。
「だからこそ」
「恐れてはいない」
 そう返す。
「恐れてはな」
「嘘です」
「王は誰も恐れぬ」
「ではローマは」
 王妃のその言葉に眉をピクリと動かしてきた。嫌な気配になっていた。
「どうなのですか?」
「陛下は立派な御方じゃ」
 ローマに膝を屈していることはヘブライの者にとって屈辱なのである。王妃はあえてそれを言葉に出して王を挑発してきたのだ。だが王はそれを何とか抑えて返してきたのだ。
「いえ」
 だがここで中年の司祭の一人が王の前に出て来て申し上げてきた。
「陛下、それは違います」
「違うのか」
「はい、あの者はまやかしです」
 彼は言う。
「神を最後に見たのは預言者エリアが最後です。ですから」
「その通りです」
 別の若いヘブライ人も言ってきた。
「あの者が見たのは神の影だったのでしょう」
「いや、それはどうですかな」
 しかしそこで別の年老いた司祭が言う。
「神は決して姿を隠されはしないもの。神はあらゆるところにおられるもの」
「それは違います
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