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サロメ
第二幕その一
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王は王妃に対して言う。
「風の音、いや違うな」
 言いながら何処か不吉なものも感じないではない。その中で述べる。
「羽ばたきかのう。天使・・・・・・それも厳しい天使じゃ」
 ヘブライの天使達は厳格であり容赦ない。自ら剣を手にして人を殺め世界を破壊していくのである。それはまるで破壊の化身である。
「聞こえぬか」
「聞こえませぬ」
 王妃の言葉はやはり素っ気無い。
「それよりもサロメ」
 今度は実の娘に声をかけた。
「疲れたであろう?」
 彼女にあえて優しい言葉をかける。顔も穏やかなものにさせていた。
「だから。下がって休むがいい」
「待て」
 だが王はそれを止める。
「まだ早い。疲れてはおらぬのではないのか?」
「いえ」
 しかし王妃はそんな彼に平然と言い返す。彼に対しては澄ました顔になる。
「それは違います」
「違っているのはそなただ」
 王も負けじと述べる。
「見よ。サロメは」
「御覧になられてはなりません」
「何故そう言う」
「陛下の御為です」
 冷たい声で述べる。高山の氷のように冷たい声で。
「それだけです」
「疲れていればそれはそれですべきことがある」
 そう言うと側の者に声をかけてきた。

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