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サロメ
第一幕その五
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く」
「一体誰が」
「裁きを」
 ヨカナーンはまた言う。
「裁きの天使を。今ここに」
「裁きの天子だというのね」
「不浄な罪を犯し続けるヘブライの者達を」
「ヨカナーン、その白い肌」
 サロメはその言葉をよそにヨカナーンに声をかけた。
「その白い肌を私に。そして」
「下がれ」
 だが彼はサロメを拒む。
「私は女には関心はない」
「何故なの?」
「私はそれ以外を見て生きているからだ」
 そうサロメに告げる。
「だからだ」
「妙なことを言うわね」
 その言葉は彼女にはわからないものであった。
「女を見ないなんて。しかも私を」
 サロメは幼い頃から美貌を誇っていた。だからヨカナーンが自分を見ないことが信じられなかったのだ。だから余計に彼に問う。
「その光の中にはなかった白い肌もエドムの葡萄の房のような髪も。何という綺麗な髪」
 ヨカナーンに告げる。
「その髪も」
「触るな」
 近寄ろうとするサロメを拒む。
「私に構うな」
「その茨の冠のような髪。紅のしっかりとした唇も。柘榴や薔薇よりも紅いのに何と逞しいの?そなたの唇は」
 また恍惚としていた。その顔で言う。
「珊瑚や朱よりも。何と紅いの」
「紅い唇も私には関係ない」
 彼はサロメから顔を背けた。

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