第二幕その十
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第二幕その十
「そなたのせいじゃ」
王は王妃の顔を見て述べた。
「そなたのせいで娘は」
「よく御覧下さい」
王妃は狼狽しきった王に対して返す。
「あれこそはサロメの願い。違いますか?」
「違うというのか」
「そうです」
王妃は述べる。
「娘の顔を」
見ればその顔はそれまでのサロメの顔とは異なっていた。少女の顔から女の顔になってしまっていたのだ。
「これでよいのです」
そこに男と従者が戻って来た。従者の手には大皿がある。そして上にはヨカナーンの首が。
銀の皿に赤い血が滴り蒼白となったヨカナーンの首がある。目を閉じ何も語らない。何も見ずにそこにあった。
「来たわね」
サロメはヨカナーンの首を見て述べた。
「やっと私のところに」
その首がある皿を手に持っている。皿の上のヨカナーンの首を見て妖しく笑う。
「口付けをしてあげるわ」
だがヨカナーンは何も語らない。黙って目を閉じているだけである。
「けれど私を見ないのね。それは何故?」
しかしそれでもヨカナーンは語らない。サロメはそんな彼にまた言うのだった。
「けれどもう貴方は私の手の中にあるわ。決して離れはしない」
恍惚とした声であった。その声で述べ続ける。
「それだけでいいのかも知れないわ。けれど」
彼女はさらに言う。
「私は貴方だけがいればいいのよ。それだけで」
「何と恐ろしい話じゃ」
王はヨカナーンの首をその両手に持って笑みを浮かべるサロメを見て言う。
「これが罪でなくて何と言うのじゃ」
「さて」
しかし王妃はそれを見ても平気である。
「してどうされるのですか?」
「どうせよとは」
「殺されますか?」
王に問うてきた。
「私もサロメも」
「殺せたら既にそうしておる」
彼は忌々しげにそう返した。
「既にな」
「ではそうなさいませ」
笑いながら王妃はまた言った。
「私共を」
「勝手にせい。しかし」
王は言う。
「わしも御前も裁きを受ける。それは覚悟しておけ」
「裁きなぞ今更」
正面を見て妖艶に笑っていた。サロメとはまた違った魔性の美であった。かつて彼はこの美に誘われ兄王を殺しその玉座を奪った。今その罪を思い出していた。
「何になりましょうか。人は全て罪を犯すものではないですか」
「構わぬと申すのだな」
「左様です」
王妃は平然と述べる。
「愉しみの末に裁きを受けるのならば喜んで」
「では好きにせよ。わしは去る」
「何処へ?」
「何処でもよい」
立ち上がってそう言い捨てた。
「だがここへは二度とは来ぬ」
「好きになさいませ」
王妃はまた冷たい言葉をかけた。王を見ようとはしない。
「ですが」
「まだ言うのか」
「隠しても全ては残っております。それ
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