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サロメ
第二幕その六
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第二幕その六

 ナラボートも何も言えない。彼は友人達に言うだけであった。
「見守るしかないか」
「ですね」
「残念ながら」
 サロメは立ち上がった。優美な姿で王に問う。
「では陛下」
「うむ」
「お止めなさい」
 王妃が娘に言ってきた。
「踊るのは」
「まあいいではないか」
 しかし王がそれを止める。
「サロメが踊ると申しているのじゃぞ。邪魔をしてはならぬ」
「何と都合のいい」
「世の中とはそうしたものじゃ」
 しれっとして返す。
「何事もな。機会があれば乗る」
 彼のやり方であった。丁度今がその時だっただけなのだ。
「よいのですね」
 サロメはまた王に問うた。
「何でも下さると」
「誓おう」
 またしても軽々しく返した。彼女の真意を知らずに。
「何でもな」
「わかりました」
 サロメはその言葉を聞き微笑んだ。その笑みは妖しく、闇の中に舞う蝶のようであった。
「誓われましたね」
「今な」
 またそれを認めた。
「誓ったぞ。これでよいのだな」
「はい」
 にこりと笑って頷く。これで決まりであった。
「わかりました。それでは」
「そなたの舞が見られるのならな」
 王はまだ気付いてはいなかった。
「何でもやるぞ」
「本当ですね」
「わしも王じゃ」
 はっきり言ってきた。
「言ったことは守る」
「よいのですね」
「よい」
 断言した。この時は迷いはなかった。
「わかったな」
「わかりました」
 サロメはその言葉に妖しく微笑む。
「それでは」
「サロメ」
 王妃が彼女を咎めてきた。
「止めておくのじゃ」
「いえ」
 しかしサロメは急に母に対して聞き分けのない様子になっていた。
「踊ります」
「うむ。しかし」
 王も何かに気付いた。
「妙じゃのう。胸騒ぎがしてきたぞ」
「胸騒ぎ」
 王妃が王のその言葉に顔を向けてきた、
「そうじゃ。これはな」
「これは」
「黒い鳥の羽ばたきじゃな。これは」
「まさか」
「いや、見えるし聞こえる」
 王はそう応える。
「そんな筈がないのに。どういうことなのじゃ?これは」
「気のせいでありましょう」
「気のせいではない」
 王妃のその言葉を否定した。
「これは確かに」
「そうでしょうか」
「身を切るような風・・・・・・冷たい、いや」
 感覚が狂っている。それもわかった。
「熱い。どうしれじゃ」
「陛下」
 そこにナラボートがすっと進み出てきた。
「ナラボート」
「これを」
 一輪の赤い花を差し出してきた。
「花か」
「はい、どうでしょうか」
「済まぬな。じゃが」
「何か」
「やけに赤いのう。どうしてそこまで赤いのじゃ?」
「御気に召されませんか?」
「いや、そうでは
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