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サロメ
第二幕その四
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第二幕その四

「剣で貫き盾で押し潰すのだ」
「戯言です」
「陛下」
 きっとしてまた王に顔を向けてきた。
「あの言葉を」
「そなたのことではない」
 王はまた王妃を宥めてきた。
「だからな」
「いえ」
 しかし王妃はそれで納得しようとしない。
「違います、ですから」
「止めさせよというのか?」
「その通りです」
 声が次第に強くなってきていた。
「ですから」
「それでものう」
 王の態度は煮え切らない。
「まあ飲め」
 煮え切らないまま話を変えてきた。
「葡萄酒を」
「はい」
 周りの者がそれに応える。すぐに王妃に杯が持って来られる。
「ローマにおられる陛下にも乾杯しようぞ」
「ええ。しかし」
「しかし?」
 またヨカナーンの話かと顔を曇らせる。
「サロメです」
「サロメが如何致した?」
「諦められて下さい」
 声が峻厳なものに戻っていた。
「宜しいですね」
「しかしじゃ」
 王はここでサロメの顔を見た。
「あれ程蒼ざめた顔は見たことがない」
「何故蒼ざめたからといって気にかけられるのですか?」
「そなたはおかしいとは思わないのか?」
 そう妻に問う。
「あの娘を見て」
「いえ」
 しかし王妃の言葉は王にとって素っ気無いものであった。
「別に。それより」
「それより?」
「あの男です」
 彼女の心はまたあの男に向けられた。
「見てみたいと思いませんか。あの男が言っている日を」
「どんな日だったかな」
「月が血の様に赤くなり、星が熟れた無花果の様に落ちる日です」
 そう述べてきた。
「本当にそんな日が来るのかどうか」
「さてな」
 またその言葉に答えようとはしない。
「わしは知らぬな」
「あの男は酔っているのです」
 王妃は険のある顔でそう述べた。
「酔っ払いに過ぎません」
「神の酒だ」
 王はその言葉を聞いてこう返す。
「神の酒に酔っておられるのだ」
「それは一体どんな酒なのでしょう」
 王妃はその言葉に皮肉な笑みを浮かべてきた。
「私は知りませんが」
「だがあるのじゃ」
 言いながら目を泳がせる。
「あの方はそれを常に飲まれておられるのだ」
 またサロメに目をやる。ここで彼女に対して言った。
「サロメ」
「はい」
 サロメは彼の言葉に応えて顔を向けてきた。
「何でしょうか」
「踊ってくれぬか」
「踊りですか」
「そうじゃ、そなたの舞を見てみたくなったのじゃ」
 そうサロメに声をかける。その目はやはり妙な熱を帯びていた。
「どうじゃ?今ここで」
「気が乗りませぬ」
 サロメは畏まってそう述べた。
「申し訳ありませんが」
「そう言わずにだ」
「サロメも嫌がっているではありませんか」
 王妃が横か
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