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EP.6 過去と現在と未来
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俺は今満足してるじゃないか。このギルドで笑って、騒ぐ毎日と、このギルドで過ごす温かい日々に……。
そう考えた俺が次に考えたのは、先ほど別れた未来のエルザだった。
――あんまり変わってなかったな……ナツをぶっ飛ばしたり。体の方は流石に変わってたが。
ふと、抱きしめられて窒息させられた事を思い出して、気絶する前に感じた匂いと柔らかさを思い出し、今更ながら気恥しくなった。
――ていうか、何年かすれば今のエルザもそうなるのか……。
想像しようとして……やめた。
今も偶に、朝起きたらエルザが自宅にいる事があるのだ。
今でさえ成長途中のエルザが気付いたらベッドにいるとか……心臓に悪いのに、未来でもそうなっているとは、流石に考えたくなかった。
「……タル、おい、ワタル!」
「ん……エ、エルザ!? ど、どうした、謝ったのか?」
すっかり考え込んでしまったのか、エルザの呼びかけに気付かずに、珍しく慌ててしまった。
しかも考えていたのが未来のエルザの事だったため、またあの匂いと柔らかさを思い出してしまったのだ。
「ああ、謝ったよ……どうした? 少し顔赤いぞ?」
「え……あぁ、ホントだ」
指摘されて顔を触ってみると、確かに少し熱かった。
……むむむ、あの程度で取り乱してしまうとは、情けないな。
「ああ、大丈夫だ……」
「そうか? ワタル、そ、その、だな……」
「約束だろ? 忘れてないよ、もう行くのか?」
「! ああ、この間美味しい店を見つけたんだ。奢ってもらうからな!」
遠慮がちに言いかけるエルザに、ケーキの約束を思い出して声を掛けると、顔を赤くしながら笑った。
まったく……奢りがそんなに嬉しいのかねぇ……。
「ッ! はいはい、分かってるから引っ張るなって……」
俺の手を引っ張るエルザはなんだか嬉しそうだった。
俺はエルザの柔らかい手の感触に、また思い出してしまって内心慌てながらも、頬が緩むのを抑えきれなかった。
――そうだ……今はこんなにも楽しいじゃないか。なら……それでいいじゃないか……。
余談だが、ケーキの甘さと軽くなった財布に辟易としたが、エルザの笑顔で、……まあいいか、と思ってしまったのは内緒である。
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