第一幕その一
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
がローマの者ではないとわかる。シリアの者で名前をナラボートという。
「いつもいつも。好きなことだ」
「おお、ナラボート殿」
「どうされたのですか?」
兵士達は彼に気付いて声をかけてきた。
「いえ、涼みに来たのですが」
そうは言いながらもサロメを見ている。
「王女もおられるのですね」
「ええ」
ナラボートは答える。答えはするがその声は空ろであった。
「ですが」
「ですが?」
「あの方は何と青い顔をしておられるのだ」
彼はサロメを見て述べた。
「まるでこの月のように」
「今の月が!?」
「いや、そういえば」
兵士達は月を見上げる。見ればそうも見える。
「そうかもな」
「ですがナラボート殿」
彼等はナラボートの暗い顔を見てまた彼に声をかけた。
「月は元来不吉なもの」
「ですから」
「しかし」
彼は兵士達の言葉を遮ってまた言う。
「見ないではいられないのだ」
「月をですね」
「そう、月をだ」
その月は天にある月ではない。地にある月である。
「私は見ていたいのだ。何時までも」
「無駄だ」
ここで地の底から声が響き渡ってきた。
「!?この声は」
「あっ、今の声は」
「その」
兵士達はナラボートが今の声に顔を見回すのを見てバツの悪い顔を見せてきた。そのうえで述べる。
「そのですね」
「今の御言葉は」
「御言葉」
ナラボートは彼等の態度が恭しいのに気付いた。そこでまた声が聞こえてきた。
「私の後に聖なる方がお生まれになられる。その方が来られる時には不毛の大地は喜び百合のように咲く」
「奇跡か」
ナラボートはその言葉を聞いて言った。
「それは」
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ