第二幕その五
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皆を代表してクリスティアーノが挨拶をした。
「君はさっきの」
「はい、今しがた陛下に少尉にして頂いた者です」
彼は顔を上げてそれに応えた。
「それは当然のことだよ」
王は言葉を返した。
「当然のこと」
「そう。君は武勲を挙げたのだから。それに報償があるのは当然のことだ」
「有り難き御言葉」
「ここにいる全ての者がそうだ」
そして王はまた言った。
「功績があればどんな者でもそれに相応しいものを手に入れられる。これからのスウェーデンはそうした国になることを今ここに約束しよう」
「陛下によって」
「いや、神の御力によって。私はその僕なのだから」
王はそれには少し下がった言葉を述べた。
「神によりこの国は導かれている。栄光に向かって」
「そしてその中心には陛下が」
「戯れ言を言うのもいい加減にした方がいい」
「全くだ」
二人の伯爵は忌々しげにまた言った。
「このままいくとスウェーデンは破滅するぞ」
「破滅に向かって突き進む気か」
「では我等はその神の僕である陛下の為に」
「この命を捧げましょう」
「有り難う。私の命は君達と共にある」
「だが用心は必要だ」
それでもアンカーストレーム伯爵には油断というものがなかった。いささか堅苦し過ぎる程であった。
「不幸や災厄といったものは幸福や栄光の陰に潜んでいるもの」
思慮に耽りながら呟く。
「やはり陛下の御身の警護は続けよう」
「こんなに素晴らしい方なのにですか?」
「素晴らしい方だからこそだ」
伯爵はオスカルにこう応えた。
「いいな。何かあったら私に知らせてくれ」
「わかりました」
二人は頷き合う。人々が王を讃える中で深刻な顔になっていた。
そして深刻な顔になっていたのは彼等だけではなかった。夫人もまた深刻な顔になっていた。
「命は皆と共にある」
だが彼女は首を横に振って溜息をつきそれを否定する。
「それは違います。陛下、貴方の御命は」
ここでアンカーストレーム伯爵の顔をチラリと見た。それからまた呟いた。
「もうすぐ尽きます」
だがそれは誰にも聞こえはしなかった。全ては暗転しようとしていたのであった。
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