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仮面舞踏会
第二幕その四
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第二幕その四

「ですが」
「ですが?」
 王は口調を急に変えてきた占い師に問うた。
「何かあるのですか?」
「これは非常によくない」
 彼女は言った。
「恐ろしいことが起こります」
「それは一体」
「それは言うわけにはいきません」
 だが彼女はそれを言おうとはしなかった。
「言えば。きっと貴方は後悔することになります」
「私は後悔することはありません」
 だが王はそれに対して毅然として言い返した。
「私は後悔という言葉は遠い異国に捨ててきました」
 皇太子としてフランスから呼び戻された時に。全てを捨てたのである。
「ですから。御安心下さい」
「よいのですね」
「はい」
 王は頷いた。
「是非共。それが何かわかれば対処も可能ですから」
「残念なことに対処出来るものではありません」
 夫人は目を瞑り顔を横に振ってこう述べた。
「こればかりは」
「何が起こるのですか?」
 心配になったオスカルが占い師に尋ねた。
「そんなに深刻な顔をされて」
「死です」
 占い師は一言こう答えた。
「死!?」
「まさか」
 それを聞いてオスカルだけでなく客達も一斉に驚いた。だが二人の伯爵だけが違っていた。
「我等の手によってだな」
「うむ」
 二人はこの時自分達の計画が成功することを確信した。そして勇気を持ったのであった。
「貴方はもうすぐ亡くなられます」
「何、人は何時かは死ぬものだ」
 だが王はそれを聞いても微動だにしなかった。
「それが戦場であれば名誉なことだ。そうではないかな」
 ここで彼は微かに北欧のかっての神々の僕になっていた。戦の神オーディンの僕に。この神は戦士達に信仰され、戦場で倒れた戦士達を自らの宮殿ヴァルハラに招くとされているのである。王は無意識の中にこの神のことを思っていたのであった。キリストを信じてはいても。
「天国に行けるのだから」
「残念ですが違います」
 夫人はまた首を横に振ってそれに答えた。
「貴方は戦場で倒れられません」
「では一体」
「貴方は殺されます」
「殺される!?私が」
「はい」
 夫人は答えた。二人の伯爵はそれを聞いて酷薄な笑みを浮かべた。
「我等がこの手で」
「間違いない」
「そして誇り高く死を迎えられます」
「おかしなことを言うな。私が殺されるなぞ」
 だが王はそれを信じようとはしなかった。
「このスウェーデンの王は暗殺では倒れない」
 そして言った。
「戦場で誇り高く死ぬことはあっても」
 グスタフ=アドルフもカール流星王もそうであった。その血を引く彼もまたそうであると言ったのだ。この時彼は自分の心の中に嵐が吹き荒れているのを感じていた。オーディンは嵐の神でもある。
「ですがこれは本当のことです」
 占い師は
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