第二幕その三
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彼は悪戯っぽい笑みのまままた言った。
「今までは見事だったが今度はどうか」
「御自身でですね」
「そう、それにアンカーストレーム伯爵にも注意するように言われたし」
「あの伯爵は心配し過ぎですよ」
「けれど彼は私のことを心から思っている」
それを邪険にするような王ではなかった。
「だからここは彼の顔も立てたいのだ」
「そうなのですか」
「暗殺などは恐れないが」
「はあ」
そしてここには伯爵の恐れている通り彼の政敵達もいたのだ。ホーン伯爵とリビング伯爵である。彼等はここにも潜んでいたのだ。
「いないな」
「うむ、見事に隠れているようだ」
彼等は辺りを探りながらそう囁いていた。
「それで次の方は」
夫人は客達に声をかけてきた。
「確か漁師の方でしたが」
「はい」
王はそれに応えて前に出て来た。ホーン伯爵とリビング伯爵はその姿を見て目を瞠った。
「間違いないな」
「ああ」
二人は頷き合う。
「それでどうする?」
「今は無理だ」
リビング伯爵はそう言って柄に手をかけた同僚を制止した。
「待て、まだ機会はある」
「わかった」
こうして二人はここでも抑えた。そして王の様子を凝視していた。
「それでは是非占って下さい」
「占うことは何ですかな」
「私の航海のことです」
彼は話を作ってこう言った。
「今度の航海でどうなるか。風や雷に悩まされ、大波に揉まれるのか」
「ふむ」
「帆は破れ、彷徨うことになるのか。それとも港で美しい女に出会うのか」
「それを占って欲しいのですな」
「美女に出会えるか、それとも海の底か」
彼は言う。
「果たしてどちらなのか。お答え下さい」
「わかりました。では」
彼女は彼について占うことにした。
「今度は手を見せて下さい」
「手相ですな」
「はい。宜しいでしょうか」
「どうも」
王は右手を差し出した。夫人はまじまじとそれを見た。彼女は王の手を見ながら言う。
「高貴な方ですね」
「いえ、ただの漁師です」
「あの占い師にはわかっているな」
「そうだな」
二人の伯爵はそれを見てヒソヒソと言い合っている。
「そして素晴らしい仕事をされている」
「どうも」
「スウェーデンを壊すという仕事をな」
「グスタフ様の功績を無にするような」
それはこの二人にとってはそうではなかった。だからこそ王の命まで狙っているのだ。
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