第二幕その一
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った水兵である。この前の武勲で勲章を授けられている。
「それもあるし。ここは彼の願いを適えよう」
そう言ってその紙に何かを書いた。それから彼に近寄りその水兵の服のポケットにそっとその紙を差し入れた。これには誰も気付かなかったが夫人だけは見ていた。そしてクリスティアーノに対して言った。
「ポケットを御覧下さい」
「ポケットを」
「はい、そこに栄光があります」
「まさか」
彼は半信半疑でポケットを探した。するとそこには一枚の紙が入っていた。彼は結構裕福な商人の家の出てあり教育は受けていた。だから字も読めた。
「何々」
読んでみる。そこにはこう書かれていた。
「汝を海軍少尉に任命する。グスタフ三世。・・・・・・嘘だろ」
「いえ、これは本当のことです」
夫人は驚く彼に対して言った。
「貴方は今日から海軍将校です」
「おいおい、まさか」
彼の顔がみるみる上機嫌になっていった。
「将校になれただって?」
「左様、それが栄光というわけです」
「何てこった、いきなり占いが当たるなんて」
将校になった喜びで完全に上気していた。
「報酬は弾むよ、ほら」
「有り難うございます」
彼は財布ごと差し出した。そして大喜びで洞窟を後にするのであった。
「やっぱり当たった」
人々はそれを見て囁き合う。
「凄いな。顔を見ただけで」
「顔を見ればおおよそのことはわかりますじゃ」
夫人は深い眼差しをたたえながらこう述べた。
「何事も。見ればそちらの漁師の方は」
「僕ですか」
王は自分が指されているのに気付いた。
「左様。とてつもなく高貴な方ですな」
「ははは、まさか」
王はその言葉を朗らかに笑い飛ばした。
「僕はしがない漁師ですよ。魚を捕るだけが取り柄の」
「それは本当に魚ですかな」
だが夫人はとぼける王に対して問うた。
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