第一幕その二
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入れ替わりに一人の男がやって来た。精悍な顔立ちをした美男子であった。少し歳はとっているがそれがかえって精悍さに知的なものまで与えている。額はやや広いがその髪は灰色でその知的な印象をさらに強くさせていた。黒い目の光も強く、それが彼の意志の強さを如実に物語っていた。青い上着に黒いマントとズボンを身に着けていた。中肉中背で均整のとれた身体であった。
「待て」
ホーン伯爵は彼の姿を認めてリビング伯爵を呼び止めた。
「どうした」
「アンカーストレーム伯爵がやって来たぞ」
「王の腹心のか」
「どうする、早くここを去るか」
「いや、少し様子を見てみよう」
彼は同僚にこう提案した。
「気になることがある」
「わかった。では見てみるか」
「うむ」
「陛下」
そのアンカーストレーム伯爵は低い声で王の前に片膝をついた。
「お話したいことがあり参上致しました」
「う、うむ」
彼は伯爵を認めて少し戸惑ったような顔になった。そして伯爵もそれに気付いた。
「どうかされたのですか」
彼は顔を上げて王に問う。
「戸惑っておられるようですが」
「いや、何でもない」
王は何とか冷静さを取り繕ってこう応えた。どうも伯爵を見て何らかの戸惑いを感じたようであった。
「左様ですか」
「うん。まずは立ってくれ」
「わかりました」
伯爵はそれを受けて立ち上がった。
「そして私に話とは」
「はい」
伯爵は話をはじめた。素早く、毅然とした物腰と言葉であった。
「実は陛下の御身のことで」
「私の」
「そうです。まずはこの宮殿が最早陛下にとって安全な場所ではなくなっているのです」
「えっ」
客達はそれを聞いてそれぞれの顔を曇らせた。
「まさかそれは」
「我々のことか」
「おそらくな」
ホーン伯爵とリビング伯爵はそれを聞いて頷き合った。
「恐ろしい陰謀が今も企まれております」
「暗殺か」
「はい」
伯爵は頷いて答えた。
「恐れ多いことながら」
「そしてそれは誰が」
客の一人が伯爵に尋ねた。
「そんな恐ろしいことを」
「そこまではまだ」
「それを聞くつもりはない」
だが王はそれを話さないように言った。
「暗殺などでどうにかできるものではない」
そしてこう言った。
「私はそんな卑劣なことを企てる者達を軽蔑する。それだけだ」
「随分と余裕があるな」
「そう見せているのではなさそうだな」
ホーン伯爵とリビング伯爵はそれを見てまた囁いた。
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