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EP.5 幼き想い
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少し遡って東の森、妖精の尻尾、顧問薬剤師ポーリュシカの家。
「ひどい傷だねぇ……応急処置はされてるみたいだけど、これを治すのは骨が折れるね」
「まあ、そう言わずに……せっかく綺麗な顔をしておるのに不憫でのう……」
「む……ちょっと来な」
エルザは、マカロフに連れられてポーリュシカを訪ねていた。
彼女はマカロフの古い知り合いで、腕利きの治癒魔導士である。人間嫌いのため、森の奥に住んでいる。
“綺麗な顔”に反応したポーリュシカは顔を顰めてマカロフの耳を引っ張り、エルザから離して声を潜めて話した。
「痛、痛た!」
「大きくなったら手を出すんじゃないだろうね……」
「とんでもない! あの子には……想い人……いや、憧れか? ……とにかくそういうのがおるわい。目の事もそいつに頼まれたんじゃ」
「フーン……その子の名は?」
「……ワタル、じゃ……そろそろ怖い顔は止めてくれんかの、ポーリュシカ」
ポーリュシカの剣幕にビビッて、個人情報を漏らしてしまうマカロフだった。
彼女は鼻を鳴らすと、次にエルザについて尋ねた。
「フン、で……あの子、どこの子だい?」
「それが……ロブの奴に世話になっていたそうじゃよ」
「ロブ!? あいつ、今どこに!?」
「……亡くなったそうじゃ」
「…………そうか」
ポーリュシカは旧友の名前を聞くと驚いたが、亡くなったと聞くと、顔を歪めたのだった……。
エルザの目の治療を始めて何日か経った。
ポーリュシカは人嫌いだし、エルザもギルドに来たばかりで、ワタル以外には完全に心を開いていなかった。
そのため、この何日かは静かなものだった。
ポーリュシカがエルザの目に巻いた包帯を取ると……
「……どうだい?」
「……治ってる……」
ずっと見えないままだと思っていた右目が見えるようになって、エルザは込み上げる物を抑えきれずに、涙を流した。
「見えているね?」
「は、はい」
「ならさっさと出て行きな……あたしは人間が嫌いでね……っと、そうだ、ワタルって子がアンタの目の治癒を頼んだそうだよ。礼を言っときな」
「ワ、ワタルが!?」
「そうだ……その顔じゃ、想い人っていうのも当たりか?」
「な、なな、なん……!?」
「落ち着きなさいな……ッ!? あんた、その目……右目だけ涙が流れていない?」
エルザは、泣きながらも真っ赤になって狼狽えた。それをからかったポーリュシカだったが……ある事に気付いた。
左目は正常なのに、右目だけ涙が流れていないのだ。
「そんなはずは……薬の調合は完璧だった……」
「……いいんです」
ポーリュシカは薬剤書を急いでめくって原因を探ろうとし
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