原作開始前
EP.3 ギルド加入、しかし……
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
妖精の尻尾のギルド内はまるで酒屋だった。
騒がしくて、楽しそうなギルドの雰囲気は、ワタルにとって未知の物であったため、入り口から少し入ったところで気圧されてしまった。
「これは……すごいところだな、エルザ……」
「ここが……ロブおじいちゃんのいたギルド……」
「……エルザ?」
ワタルの言葉がまるで耳に入っていないようにエルザは呟き、ワタルは肩を叩きながらもう一度声を掛けた。
「……な、なんだ?」
「大丈夫か? ぼおっとして……」
「大丈夫だ。まずはギルドマスターに会わないとな」
エルザはそう言うと、ワタルの手を引いてカウンターの方へ歩いて行き、ワタルは慌てた。
「お、おい……俺はまだ入るとは……」
「入らないのか……?」
「う……」
エルザの悲しげな声にワタルは声を詰まらせた。
それに合わせるように、周りで見ていた男たちも……
「坊主、女の子泣かせるなんて男として失格だぞ〜」「そうだそうだ、男ならガツンと行け!」
……などと野次を飛ばして……結局ワタルが折れた。
「……分かったよ。マスターの許可が下りたら入るよ……」
「本当だな……?」
「ああ」
「よし!」
エルザはワタルの返事に満足したのか、歩くのを再開した。
野次や口笛がまた飛んだが……ワタルはもう気にしないことにした。
――それにしても……随分懐かれたもんだな……
エルザが妖精の尻尾のマスター、マカロフと話している間、ワタルはそう思ったが、その胸中はあまり穏やかではなかった。
――俺の正体が知られればこのギルドには……いや、マグノリアにすらいられないだろう……。エルザとも……
別れることになる、ワタルはそう胸中で呟いた。少し胸が痛むのが何故かは分からなかったが……1ヶ月も一緒にいたからだろう、と思うことにした。
「そうか、ロブの知り合いか……。ロブは……どうしておる?」
「……その……ロブおじいちゃんは……私を庇って……」
「……そうか……悪いことを聞いたな、エルザ。じゃが、もう大丈夫じゃ。妖精の尻尾はお前さんを受け入れよう。今日からここが君の家であり、ギルドの仲間は君の……家族じゃ」
マカロフはエルザの答えに一瞬悲しそうな顔を浮かべたが、温かい言葉をエルザに掛けた。
それに同調するように、ギルドの者たちもエルザを歓迎して騒いだ。
話の区切りがついたのを察して、ワタルもエルザに近づいた。
「話は終わったのか、エルザ?」
「ああ。……マスター、こいつもここのギルドに入れたいんだが……」
「おお、今日は二人も新人が増えるのか。お前さん、名は何とい
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ