原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ると……何を考えたのか、エルザはワタルの指を……赤子のように突然咥えた。
「うわっと……目、覚めてないよな?」
吃驚して指を引っ込めると、エルザの寝顔は悲しそうに歪んだ。
どうしたものか、とワタルが考えていると……
「……行かな……ロブおじ……ジェラ……」
「……寝言……か?」
「……ワタル」
「!」
悲しい夢を見ているのだろう、眼帯に覆われていない左目からは涙が溢れ、遂にその一筋が零れ落ちた。
ワタルは自分の名前を呼ばれた事に少し驚いたが、エルザを起こさないようにそっと優しく髪を撫でて、できるだけ穏やかに声を掛けた。
「大丈夫だ、俺はどこにも行かない。俺は此処にいるよ」
エルザの悲しそうな寝顔が穏やかになるまで撫で続け……ワタルも自分の布団に入り、そして思った。
――“明日”と“約束”……か……久しぶりだな、そんなことを言うのは……。
普段より穏やかに眠りに入ったワタルだったが……彼が今夜見た見た夢は、赤く染まった床と、狂ったように嗤う、白髪を血に染めた男の夢だった。
翌朝、エルザは頬を赤くして目覚めた。
昨晩彼女が見た夢は最近の、塔の夢だった。夢に出たのは傷ついた仲間たち、倒れて動かなくなったロブ、そして……狂ってしまったジェラールだった。
次に見たのは……ワタルの夢だった。エルザは、彼も行ってしまうんじゃないか、と思って手を伸ばすと、ワタルはその手を取って「此処にいる、どこにも行かない」と言ってくれた。
エルザは、それがたまらなく嬉しく、安心した。
「ワタル……」
「何だ?」
「ひゃ、ひゃい!?」
思わず口にしてしまった呟きに答えた者がいて、エルザは声が裏返らせた。
「どうしたんだ、寝ぼけてるなら……」
「な、何でもない!」
「……顔が赤いぞ、本当に大丈夫か?」
「何でもないったら何でもない!!」
「……分かったよ、きついようなら言ってくれよ」
――起きてるなら言ってくれればいいのに……うう、絶対顔真っ赤だ……。
「朝ご飯は旅館で用意してくれるそうだから……エルザー、聞いてるかー?」
「は、はい!」
「……ホントに大丈夫?」
「平気だと言ってるだろう、しつこいな」
「ああ、悪かった悪かった。……朝ご飯用意してくれたみたいだから食べようか」
「ああ、分かったよ……」
顔を真っ赤に染めて否定するエルザを、ワタルは心配したが……頑固なエルザに、ワタルは何とか了解した。
= = =
朝食の後、何とか落ち着いたエルザは、ワタルに魔法を教わっていた。
「甘い! “換装”の間の隙は少なくしろ!」「身体能力強化の魔法は魔力を大きく消費
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ