第三話「第八のカンピオーネ」
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準備は良いかしら? では、始め!」
† † †
エリカの合図とともに後方へ跳躍してさらに五メートルほど距離をとった。草薙の所有する権能を知らないからな、まずは小手調べだ。
足を左右に肩幅程度に開いて拳を構える草薙。その構えは素人そのものだ。
――どうやら、武術の心得はないらしいな。なら、始めはこれで。
着物の袖を揺らしながら霞む勢いで右の拳を繰り出す。当然、間合いが遠いため拳そのものは届かないが、拳から発せられた拳圧はその限りではない。
「っ!?」
カンピオーネ特有の直感を働かせて横に跳んで回避する草薙。進路上にある壁がドゴンッ、と音を立てて陥没した。拳大ほどの大きさに草薙の顔が引き攣る。
「へぇ、今のを避けるか」
「避けるかじゃねぇ! 避けなかったら下手すりゃ死ぬだろ!」
「大丈夫大丈夫。このくらいじゃカンピオーネは死なんよ。知っての通り丈夫に出来てるからな。じゃ、どんどんギア上げていくぞー」
「や、ちょっ、まっ――うぉおおおおお!?」
両の腕を振るい今度は連続で拳を繰り出す。着物の擦れる音と空気を切る音が重なり、キュインキュインと甲高い音が響いた。
すべて紙一重で躱すのは流石といったところか。しかし、それではジリ貧だぞ?
「ほれほれ、どうしたどうした! そんなんじゃいつまで経っても勝てないぞ! 権能を使え権能を!」
「くそっ! なら、使ってやるよッ!」
「お?」
それまで勘で避けていた草薙が初めて完璧に拳圧を回避した。いきなりスイッチが入ったかのように目にも留まらないスピードで拳圧をすべて回避すると、一息の間も置かずに俺の背後に回り込んだ。
頸部を狙った手刀を頭を傾けて紙一重で回避すると転身し、肘を突きだすが軽やかに躱される。
「ふーむ……、身体能力の向上と体感時間の延長、もしくは思考加速の権能といったところか?」
瞬きの間に十メートルも離れた場所に移動している草薙。それに追随して、間隔を開けずに俺も同じく移動していた。
目を見開く草薙の腹部と首部に手を添え、投げ飛ばす。地面に叩きつけると同時に腹部に当てた右手に力を入れた。
「かはっ――!」
衝撃で草薙を中心に地面が陥没し、肺中の呼気を吐き出す。
「ほれ、もう終わりか? そんなはずはないだろう。さっさと立てぃ」
振り上げた左の拳を打ち下ろす。拳は難なく草薙の鳩尾に突き刺さった。草薙の肢体が跳ね上がる。
――おいおい、ま
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