第一話「会合」
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反射的に腰の剣を抜いていた。憤怒に満ちた目で目の前の老人を睨みつける。
「それは、わたしの名を知っての言葉ですか?」
「エリカ嬢、どうされた!」
隣で『紫の騎士』が戸惑った声を上げるがそれを聞き流し、剣先を向けたままその目を見据える。
「わたしの名を言ってみなさい。わたしは誰?」
「……エリカ・ブランデッリ・海堂」
わたしがなにを言いたいのか分かったのか脂汗を垂らす老人。侮蔑の視線を向けながらなおも言葉を続けた。
「そう。わたしはエリカ・ブランデッリ・海堂。最強のカンピオーネである海堂蒼蓮の妻であり、誇り高き第一の騎士よ。身も心も魂もあの人に捧げたわたしに、その言葉を吐くというの?」
「い、いや、すまない。失言を赦されよ」
滝のような汗を流しながら額がテーブルに付くほど深く頭を下げる。それを見て溜飲を下げたわたしは剣を収めた。
「あの人は独占欲が強い上に変にプライドも高いから、わたしが他の男と関係を持っているだなんて話が耳に入ったらどうなるかなんて、言わずもがな解ることでしょう?」
「う、うむ。私の失言だ、本当に申し訳ない。それでだが――」
「安心して、別にあの人には言わないわ。こんなくだらないことであの人の手を煩わせたくないもの」
「恩にきる……」
明らかにホッと息をつく老人。無理もない。あの人は滅多に怒らないけれど、わたしたち妻や娘関係となると途端に沸点が低くなるものね。
普通なら「私が他の男に靡くと思うだなんて、そんなに信用がないの?」と思うかもしれないが、あの人とわたしたちは魂から繋がり合えていると胸を張って言えるし、途方もない信頼と愛を注いでくれているのも知っている。けれど、同時に独占欲が高いことも知っているから、嫉妬してもらえると純粋な歓喜の念が押し寄せてくるのよね。
「終わりましたか? なら話を戻しますが、残念ながら草薙護堂の力を我々は確認していないのです。果たして彼が真のカンピオーネなのか、我らは見極めなければならない」
『紫の騎士』の言葉に皆が頷く。当然、わたしもそのような要求が来ることも分かっていた。
「ええ、確かに総帥の仰ることもごもっともです。ですので、手っ取り早く、それでいて確実に証明して差し上げましょう」
「証明?」
怪訝な目でこちらを見つめる彼にフッと微笑む。
「実は草薙護堂はすでにローマに到着しております。わたしが事前に呼び付けておきました。明日、あの方の戦いをその目で焼き付けて下さい。千の言葉に勝る現実が、そこにはあるでしょう」
「闘うとなれば、その相手は誰が務める? 王の相手となると生半可な者で
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