第4話 ゲーム
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その渦に、長門の紡ぎ出す呪文が明確な方向性を示し、彼女の思い通りに――――。
刹那、長門の呪文が形成されるより一瞬早く、俺の覇気に因り、長門の周りに集まりし霊力の塊が霧散して果てる。
いや、それは人が生み出す覇気に非ず。伝承に語られし、龍が生み出す気。
荒ぶる自然霊の化身。それが、龍。そして、俺の血脈の中には、その血が受け継がれて来て居ます。
龍の吐息に等しい気を正面から浴びた彼女から、驚愕に等しい気が発せられた。
刹那。俺の右腕が動く。
その右腕を彼女の左手が払い除けたのは果たして行幸で有ったのだろうか?
しかし、次に繰り出されし左腕を遮ろうとして、彼女が右手を出した刹那!
先に振り払ったはずの右腕が、ゆっくりと彼女の頭の上に置かれていたので有った。
「どうや。俺の能力が理解出来たかな?」
余裕の笑みを浮かべ、何故か、勝ち誇った雰囲気で長門の頭を撫でている俺。
「最初に、長門さんが振り払ったのは殺気。現実には存在しない、むき出しの霊気の塊を俺の腕と認識して長門さんは振り払ったと言う事」
種明かしをして仕舞えば、何の事はない初歩的な方法。初手で相手の機先を制した後、相手の心理的な抵抗力を奪い去って、こちらの魔法の影響下に置いて仕舞う。
古典的な魔術の手法。しかし、故に、その効果も大きく成るのは当然です。
まして、長門には、俺の気を理解出来る鋭敏な感覚が存在する事も確認出来ましたし、同時に、戦闘時の俺のスピードに対処出来る反応速度も持っている事も判ったのですが。
強化された俺の戦闘速度は、人の限界を易々と超えているはずなのですが。
しかし、それでも尚、俺の方が身体能力としては上、と言う事が彼女にも理解出来たでしょう。
妙に上機嫌な俺と違い、先ほどまでと同じ、透明な表情を浮かべたまま、やや上目使いに俺を見上げる沈黙の女神さまは……。
「つまり、俺がホンキになれば、長門さんが全力で抗おうとも、自分の身ひとつ護る事さえ覚束なくなる。と言う事」
軽く、彼女の頭をポンポンと叩きながら、そう長門に教える俺。
もっとも、これは本来なら、そんな必要はない行為。ただ、何となく彼女の髪の毛が手に触れる感覚が、非常に心地良い物に思えたから続けて居ただけ、なのですが。
そんな俺を見つめる彼女の瞳は……これは、怒り?
「わたしが全力で抗ったとしても、自らの身すらも護る事が出来ないのなら、貴方が何処で就寝しようとも意味はない」
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