第四幕その一
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た。
「御前だ!」
彼は叫んだ。
「御前の血が罪を清めるものなのだ!」
後ろに掛けられていた絵画を怒りに満ちた目で見ながら言う。その絵は王の肖像画であった。誇り高い顔をし、立派な服装に身を包んだ王がそこにいた。そして伯爵を慈愛に満ちた顔で見下ろしていた。だが今彼はそれを怒りに燃えた目で見据えていたのであった。
「御前か、彼女の心を汚したのは。私の愛する妻の心を汚したのは」
彼は怒りと憎しみに燃えた声で言った。
「私を信頼していると言いながら毒を盛った。友情に対する報いがそれなのか」
言葉を出す度に怒りが燃え盛っていく。
「妻は失われた、貴様の手によって」
言いながら椅子に向かう。
「あの幸福な日々も清らかな思い出も。今の私にあるのは憎しみと怒りだけだ」
そう言いながら椅子に崩れ落ちる。そして沈痛な顔で下を見詰めるだけであった。
暫くして扉をノックする音が聞こえてきた。伯爵はそれに気付き声を向けた。
「誰か」
「ホーン伯爵とリビング伯爵でございます」
「そうか、来たか」
彼は召使のその声に応えた。
「如何為されますか」
「お通ししてくれ。この書斎までな」
「わかりました。それでは」
召使の声が遠のく。そして暫くして二人の伯爵が部屋に案内されてきた。
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