第三幕その四
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第三幕その四
「アンカーストレーム伯爵」
二人はアンカーストレーム伯爵を見据えた。
「卿には恨みはないがここで死んでもらう」
「覚悟はいいな」
「私を倒すことができたらな」
彼は二人を見据えて言い返した。
「私をな。出来るのか」
「この数を前にしてまだ言えるか」
「数の問題ではない」
彼は尚も言う。
「剣は。数ではなく腕だ」
「言ってくれる」
「ではそれを証明してみせよ」
二人はそれぞれ左右に動きアンカーストレーム伯爵を挟み撃ちにしようとする。それに対して伯爵は冷静に構えそれを待ち受ける。彼は全く臆するところはなかった。
「来い」
「言われずとも」
二人は同時に動いた。
三振りの剣が闇夜の中に煌く。アンカーストレーム伯爵は稲妻の様な動きで剣を振るう。二人はそれに対して防戦一方であった。
「くっ」
「これがアンカーストレーム伯爵の剣か」
「どうした、まだ序の口だぞ」
伯爵は落ち着いた声で言う。
「この程度で遅れをとるか」
そしてさらに突きを繰り出してきた。
「これはどうだっ」
「うぬっ」
リビング伯爵はその突きをかろうじてかわす。しかし攻めることは不可能だった。
「だがっ」
もう一人いるのだ。ホーン伯爵が。彼は同僚を救う為に剣を振り下ろした。それで伯爵を斬るつもりであった。
「甘いっ」
しかしアンカーストレーム伯爵はその剣を横目で冷静に見ていた。そしてすっとかわす。だがそれを夫の危機と感じた夫人は慌てて間に入る。そしてその剣が彼女のヴェールを斬り裂いてしまった。
ヴェールが落ちる。そしてそこから彼女自身の顔が零れ落ちるのであった。
「何っ」
皆それを見て思わず動きを止めた。
「あれは」
「間違いない」
ホーン伯爵とリビング伯爵も言い合った。
「彼の奥方だ」
「それが何故ここに」
「これはどういうことだ」
暫し呆然としていた伯爵も強張った顔で妻に問う。
「何故御前がここに」
「成程、こういうことか」
リビング伯爵が酷薄な表情で呟いた。
「卿の主君は卿の妻と通じていたのだ」
「それが卿の主君の正体だったというわけだな」
ホーン伯爵も言った。
「信頼していた主の正体は不誠実な男だった。そういうことだ」
「不誠実な男」
「信頼を裏切るのにこれ以上はないという形だな。違うか」
「クッ・・・・・・」
伯爵は反論することができないでいた。その通りだからだ。
「我々が王を殺そうとしたのは別の理由からだったが。ここまで破廉恥な男だったとはな」
「呆れた話だ。だがここは退こう」
「このことは言わぬ。我等にも誇りがあるからな」
王の命は狙っていても彼等は決して卑しい者達ではなかった。アンカーストレーム伯爵の誇りを守ることは忘れ
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