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仮面舞踏会
第一幕その一
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頭の男が頷く。軍人出身の貴族であるホーン伯爵であった。彼等がグスタフを恨む根拠はあった。これには当時のスウェーデンが置かれていた複雑な事情が背景にあった。
 かつてスウェーデンは確かに軍事大国であった。だが一つ弱点があった。それは人口である。他の国に比べて人口が少ないのである。北にあるこの国の悩みであった。土地は痩せ、満足な数の国民を養いきれなかったのである。
 その為この国は軍事大国ではなくなった。兵士の数が少なかったのである。その地位はやがてプロイセンに奪われることとなった。
 そしてロシアに。ロシアはスウェーデンにとって不倶戴天の敵であった。そのロシアの脅威は政情にも深く関わっていたのであった。
 グスタフの父アドルフ=フレデリックはそのロシアの圧力で皇太子となった。しかしそのロシアの圧力を嫌う議会の有力者達が巻き返しを図って彼の妃にそのロシアと敵対するプロイセンのフリードリヒ大王の妹を迎えたのである。実を言うならばスウェーデンとプロイセンの関係も決してよくはない。バルト海を挟んでいがみ合う関係だ。事実七年戦争では干戈も交えている。
 だがロシアとプロイセンはそれ以上に険悪な関係であった。ロシアにとってプロイセンはそのスウェーデンよりも厄介な相手であった。当時ロシアはオーストリアと深い同盟関係にあったがこれはプロイセンがあったからである。とりわけエリザベータ女帝はプロイセン王を蛇蝎の如く忌み嫌っていた。女帝の前でプロイセン王のことを言うのは禁じられていた程である。
 何故そこまでプロイセン王を嫌うのか、それは理由があった。単にプロイセンが邪魔なのではない。彼女は女性としてもプロイセン王を嫌い抜いていたのだ。
 フリードリヒは女性関係の話のない人物として知られている。芸術と哲学、軍隊を愛したが女性は愛さなかった。彼は女性は子供を産む道具でしかないと公言していた。
 これを女性である彼女が聞き逃さない筈はなかった。彼女は同じく女性でありそのフリードリヒを激しく憎むオーストリアのマリア=テレジア、そしてフランス王ルイ十五世の愛人であり実質的に宰相とも言えたポンバドゥール侯爵夫人と結びプロイセンに対抗した所謂『三枚のペチコート』であり、これにより七年戦争が起こった。
 これにスウェーデンが参加していたのは事実でありロマノフとハプスブルグ、そしてブルボンという欧州の権門を三つも敵に回したプロイセンは欧州全土を敵に回したと言っても過言ではなかったが生き残った。そしてさらに複雑なことにプロイセンはその宿敵であるロシアやオーストリアとも利害を共通することもあったのである。
 そのプロイセン王の妹を王妃に迎えたアドルフ=フレデリック王であるが彼は王妃の言葉に乗り王権強化を図った。具体的にはクーデターであるがこれは失敗ひた。これで国王夫妻は議会から国政
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