第百十一話 青を見つつその十三
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
だ。今では朝廷に参内できるまでの官位になってもいるのだ。
「しかし官位も領地も限度がある」
「特に領地はですな」
「幾らでもやっておってはすぐになくなる」
ここが難しいところだ。家臣には褒美を与えなければならない、だがそれには限度があるものがあるのだ。
一所懸命という言葉がある、だがだった。
「鎌倉幕府は元寇を防いだ」
「御家人達も手柄を立てましたな」
「しかし褒美として与えられる土地はなく」
「しかも戦で力を使い過ぎた鎌倉幕府は衰え」
「遂には滅んだ」
鎌倉幕府にしてもそうなった、そしてだった。
「室町幕府は気前よく褒美を与え過ぎた」
「幕府の力は弱かったですな」
「山名や細川、大内が強かったわ」
特に六分の一衆と呼ばれた山名である。戦国の今こそ毛利により滅ぼされる寸前だがかつてはそれだけの力があったのだ。
その他に管領の細川家に西国の大内家だ、その他の家も多くの領地を持ち。
「幕府は弱かった」
「それが今に至りますな」
「うむ、だから褒美は難しいのじゃ」
「領地は欠かせぬにしても」
「考えてやらねばならん」
さもなければ鎌倉幕府や室町幕府の二の舞になるからだ。信長は彼等の轍を踏むつもりは毛頭なかった。
だからこそ評定についてこう言うのだった。
「領地だけでなく茶器も宝もじゃ」
「そして銭もまた」
「ふんだんに用意してある」
そうしているというのだ。
「様々なものをやるとしよう」
「それが兄上の評定ですか」
「無論満足させる」
不満を抱かせる愚も犯さないというのだ。
「絶対にな」
「難しいですな」
「そうじゃ。評定は政の中で最も難しいものじゃ」
信長は確かな顔と声で信興に述べる。
「しかとやるぞ」
「そして七百六十万石を治められますか」
「七百六十万石を治められずして天下は治められぬわ」
天下はそれより遥かに大きい、だからだというのだ。
「だからじゃ。ここは見事仕切る」
「わかりました」
信興は兄の言葉に頭を垂れた。信長のその矢は放たれ的に刺さった、それは的の中央を見事に射抜いていた。
第百十一話 完
2012・10・20
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ