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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始前
第四話「急転」
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のか。姉さんが泣くと怖いんだけど」


「仕方がないじゃない。だって可愛い妹が出て行ってしまうんだもの」


 萌香は困ったように笑うだけだ。


「心愛を頼む。私がいないと何かと心配だからな」


「ええ、わかっているわ。萌香ちゃんも身体には気を付けてね」


 萌香が俺に目を向ける。その表情は複雑で、色々な思いが渦巻いているのが俺でも分かった。


「兄さん……」


「なんて顔をしているんだ。別に一生会えなくなるわけじゃないんだ。時々、俺から会いに行くよ」


「……そうだな。千夜兄さん、家や母さんのことよろしく頼むな」


「ああ、任された」


「お嬢様、そろそろ時間です」


 運転手の声に萌香が踵を返す。


 その姿が見えなくなるまで見送り続けた俺は館に目を向ける。


 そこには、窓から悲しげな顔を覗かせたお袋の姿が見えた。


 ――お袋に今回の件を問いただすか。


 今回の萌香の騒動は腑に落ちない点が色々とある。いつもは長男である俺に報告してくるのに、今回に限って何も言わなかった。それに、前々から決めていたという話もきな臭い。


 俺は館にいるお袋の元に足を向けた。走ったため、五分も時間はかかっていない。お袋は大ホールの窓から萌香の乗っている車が出て行くのを静かに見届けていた。その胸中にはどのような思いが渦巻いているのかは本人しか分からないだろう。


「見送りにはいかなくていいの?」


 お袋の元に行こうとしたところ、廊下の奥から聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。思合わず隠れてしまう俺。


 お袋は振り返りもせずに口を開いた。


「……行って萌香の顔を見たらきっとこの決心が鈍ってしまう。だからあなたもここにいるんじゃないの? 亞愛」


 少女――亞愛は困ったように頬をかいた。


「あや〜、その様子だと私の正体はもうバレてるみたいね。お父さんも一足先に仕事に行っちゃったし、もしかして誘ったの?」


「……」


 ――正体? 一体何の話をしているんだ?


「私には夢があるの。かつて人間を滅ぼそうとした真祖アルカード、その彼を滅ぼしたとされる三人の妖怪。後に三大冥王と呼ばれ、骸となったアルカードの傍らでその眠りを永遠に見届けているという」


 ――なんだ、その話は……。そんな話し聞いたことがないぞ!


 困惑する俺を余所に亞愛は一歩一歩お袋の元に近づいていく。お袋が何も答えないということはその話の信憑性は確かなものということだろう。


「私の夢は世界を手にすること。そのためには伝説の真祖の血が、力が必要なの。そう、三大冥王首領――もう一人の真祖で
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