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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第三話「真祖」
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 そこにいたのは強大な怪物だった。見上げるような巨体はヒトの身体ではなく、まるで映画に出てくるエイリアンのような身体をしている。


 姉さんは振り返ると、嬉しそうに手を広げた。


「見てよ萌香、すごいでしょ! 彼はもう死んでいるけど、死んでもなお際立つこの荘厳さ! 真祖は強さも能力も普通のバンパイアを遥かに凌駕する。私はどんな手を使っても、あらゆる手段を使ってでもこの力を手にしたいの」


「ね、姉さんはこんなものを手にいれて、何がしたいんだ……」


 震える唇から紡いだ言葉に姉さんはただ一言こういった。


「――世界」





   †               †               †





 気が付けば自室にいた。どうやら無意識のうちに部屋に戻っていたようだ。


 姉さんがなにを考えて世界などと言ったのかは分からない。そう、分からないんだ。


 姉妹なのにまるで姉さんのことが分からなかった。世界を手にして一体何をするのだろうか。


 亞愛姉さんは私とは違いすぎる。見ているもの、器の大きさ、その何もかもが――。


「萌香!」


 扉を開け放ってお母さんがやって来た。その顔は焦燥感に満ちており、普段のお母さんが浮かべている表情とは一線を画している。


「お、お母さん? どうしたんだ、そんな血相を変えて――」


 ――パン!


 ジンジンと熱を帯びる頬。お母さんの目から涙が伝うのを見て、初めて叩かれたのだと気が付いた。


 あまりの出来事に呆然としているとお母さんが私の両肩を掴み捲し立てる。


「見たのね、萌香っ! 地下のあれを……! なんてことをしてくれたのあなたはッ! あれは……あれはッ!!」


 お母さんは急に私の肩から手を離すと、戸棚から服を物色し始めた。手当たり次第に鞄に詰めていく。


「お、お母さん!? どうしたの? どうして急に私の荷物をまとめるの!?」


「見ての通りよ萌香。あなたには明日一番でこの館を出て行ってもらうわ」


 一瞬、何を言っているのか分からなかった。


 私がこの家を出て行く?


 なんで……なんで……っ!


「じ、冗談でしょ……。なんで私が家を出なくちゃいけないの? 私が地下のあれを見たから!? 言いつけを破ったから!? ねぇ――」


「違うわ。……このことは前から一茶さんと相談して決めていたことなの。すでに預け先も決めてあるわ」


 信じられなかった、お母さんがそんなことを言うなんて……。


 否応なしに身体が震える。


「どうして……お母さんは私が嫌いなの……? 私が邪魔だ
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