暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ーBind Heartー
黒と白そして青
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俺を包んでいた転移結晶による青い光が晴れると、既に転移は完了していた。先ほどまでの葉擦れのざわめきに代わって、甲高い鍛治の槌音と賑やかな喧騒が耳朶を打つ。
気配を感じて隣に目をやると、俺と同じく転移してきたトーヤが、今まさに掲げていた手を下ろしているところだった。
俺達が出現したのは五十層の主街区、アルゲードの中央にある≪転移門≫だった。

「ここに来るのもひさびさですけど、やっぱりごちゃごちゃした所ですねぇ……」

「目的の店はすぐそこだけど、うっかりしてるとすぐに迷うことになるからな。ちゃんとついて来いよ」

さっきまでついて来るなと言っていたのに、今では真逆の事を言っている自分に内心で苦笑した。
いつの間にか、おれの中にあったトーヤに対する拒否感は、かなり薄れてしまっているようだ。

「なははは。はじめて来た時はは五日くらい出られなかったことがあるんで、もうあんなのはカンベンです」

「五日って……。お前、絶対ここには住めないな」

独特な愛想笑いを浮かべる少年に、ため息を漏らす。
このアルゲードの街を簡潔に表現すれば、≪猥雑≫の一言に尽きる。
実際、ここの裏通りに迷い込んで、数日出てこられなかったプレイヤーの話も枚挙にいとまがないほどだ。俺もここにねぐらを構えて一年近くが経つが、いまだに道の半分も覚えていない。
だが俺はこの街の雰囲気が気に入っていた。かつてよく遊びに行っていた電気街に似ているからだ、などという感傷的な理由だとは思いたくないが。

「さて、早いとこ≪ラグー・ラビットの肉≫を売っちまおうぜ。美味い飯なら、その後でご馳走させてもらうよ」

「あ、はい!」

歩き出した俺に一歩遅れて、トーヤはロングマフラーとアンテナの癖っ毛を揺らして後ろについた。
転移門のある中央広場から西に伸びた目抜き通りを、ふたりして人ごみを縫いながら数分歩くとすぐにその店があった。五人も入ればいっぱいになってしまうような店内には、プレイヤーの経営するショップ特有の混沌っぷりを醸し出した陳列棚が並び、武器から道具類、食料までもがぎっしりと詰め込まれている。
店の店主はといえば、今まさに店頭で商談の真っ最中だった。

「よし決まった! ≪ダスクリザードの革≫二十枚で五百コル!」

豪快な声を張り上げる禿頭の巨漢の店主は、商談相手の気弱そうな槍使いの背中をばんばん叩いた。そのまま有無を言わさぬ勢いでトレードを完了させた店主ーーエギルは、最後に槍使いの背中をバシンと一回どやす。
ダスクリザードの革は高性能な防具の素材となる。明らかにどう考えても五百は安すぎるだろう。

「毎度!! また頼むよ兄ちゃん!」

どこか不服そうな槍使いを見送った俺が店内に入ると、トーヤも俺にちゃんとつ
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