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EP.1 砂浜の少女
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浮かんだ。
――あの顔を見た時、この人は大丈夫だ、裏切ったりしないって思えた。……なんでだろう?
エルザは、悲しそうなワタルの顔に安心感を覚えた。何故、と思ったが……答えは思ったより簡単に出た。
――そうか……同じなんだ、私と……
指導者のジェラールに裏切られた自分と、ワタルの悲しげな顔が重なったのだ。
ジェラールや仲間の事を考えると心がひどく傷んだが……今は一人じゃないと思える事で、乗り越えられるんじゃないか、とそう錯覚した。
早く顔が見たい、そう思えるほどに、彼女はワタルに惹かれるものを……このときは無意識だが感じていた。
そして、1時間ほど経っただろうか。
「お待たせ、買ってきたよ」
「お、おかえり、遅かったな……」
「他にも買い物があったからな」
「そ、そうか……」
時間がかかったのは包帯や薬など、消耗品を買ってきたからである。
自分のためだ、と彼女は分かっていたため、申し訳ない気持ちになった。
「だからそんな顔するなって。ほら、服買ってきたから、着替えろ」
そう言って後ろを向いたワタルが差し出したものは、白のワンピースだった。
エルザは礼を言うと着替え、そしてワタルに声を掛けた。
「あ、ありがとう…………もういいぞ」
「ん、了解……おっ、似合ってるよ」
「そ、そうか?」
「ああ、本当だ」
「似合っている、か……そうか、そうか……」
似合っている、と言われたのは初めてだったため、エルザは恥ずかしがって顔を赤く染めた。
「? ……まあ、いいや。それで、だ。やっぱりフィオーレには歩くと結構かかるそうだ。……それでも行くんだろ?」
「ああ……フィオーレのマグノリアにあるギルド。そこが妖精の尻尾、ロブおじいちゃんの言っていたギルドだ」
「……マグノリアに有ってよかったな。フィオーレの東部にある町だ……というか、マグノリアにあるって知ってたんだ」
「……今思い出したんだ」
「……そうか、じゃあ行こう」
ワタルはロブおじいちゃん、という単語に引っ掛かったものの、エルザの悲しそうな顔を見て、追及するのはやめた。
そして荷物を背負うと、エルザに声を掛け、洞窟を後にした。
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