原作開始前
EP.1 砂浜の少女
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タルの急な提案に、エルザは聞き返した。
「俺も西の方に行こうと思ってたんだ。行く方向が同じなら人数は一人より二人の方がいい」
「でも……」
「フィオーレまでは歩いて1ヶ月は掛かるぞ。俺は2年くらい一人旅をしているけど、流石に女の子一人はちょっと危険だと思うぞ。……それとも俺は信用できないか?」
「そんなことは……」
再び言葉に詰まったエルザに対し、ワタルは話を進めた。
「じゃあ、決まりだな……歩けるか?」
「あ、ああ……そういえば、傷の治療の礼を言ってなかったな……ありがとう」
「ん? ああ、気にするなよ、そんなこと」
「……その……見た、のか?」
「? 何を?」
ワタルは、エルザが何を言っているのか分からなかったため、尋ねた。
「……なんでもない!」
「……何だ? っておい、そんなに走ると傷が開くぞ!」
そう言うとエルザは顔を赤くして走りだし、ワタルも後を追って走った。
こうしてワタルとエルザの二人旅が決まり、二人はまず情報取集に、と近くの町の方に歩いて行った。
目的地は妖精の尻尾。二人のとっては、家、とも呼べる場所になるギルドである。
= = =
「……旅云々の前に服を買わないとな……」
「え?」
「その格好で歩き回るつもりか?」
「あ……」
今のエルザが身に着けているものは、ボロボロの服……とも呼べるかすらどうか怪しい布切れだ。
治療に使った包帯もあるが、そのままだと一ヶ月持たないだろう……というのはワタルにも、エルザにも分かった。
「何か買ってくるから洞窟で待ってろ」
「……お金はあるのか?」
「小さい町で、ちょっとした何でも屋をやって回ったからな……少しなら大丈夫だ」
「……じゃあ、頼む。すまないな……」
気にするな、と言ってワタルは歩き始めた。
残されたエルザは毛布に包まりながら考えた。
――なんでワタルは私に色々世話してくれるんだろう?
エルザは少し前まで、カ=エルムの近海に秘密裏に建設されている塔で働く奴隷だった。
そして反乱を起こしたはいいが、自分たちのリーダー的存在とも言えるジェラールが黒魔導士・ゼレフの亡霊に囚われて乱心、エルザは一人で「仮初の自由を堪能しろ」と言われて塔から放り出されたのだ。
ジェラールは自分たちのリーダー的存在だったから、エルザのショックは大きかった。
それ故に、ワタルの真意が分からなかった。見ず知らずの自分を保護、治療し、旅の道連れにしてくれる、と言ったワタルの事を信じてもいいのか、エルザは揺れていた。
――信じたい。でもまた裏切られたら……
その時、悲しそうな顔をしたワタルの顔がエルザの脳裏に
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